山城地域の更なる発展を目指して

2020.9.17

京都府山城広域振興局

局長 川口龍雄   

皆さま、こんにちは。御紹介を頂きました京都府山城広域振興局長の川口と申します。本日は、宇治鳳凰ロータリークラブの例会にお招き頂きまして誠にありがとうございます。御出席の皆様におかれましては、平素より、京都府政の推進に格別の御理解と御支援を頂戴しておりまして、この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。また、宇治鳳凰ロータリークラブにおかれましては、本年3月に創立30周年という記念すべき節目を迎えられましたことをお喜び申し上げますとともに、クラブの更なる御発展と会員の皆様の今後ますますの御健勝・御活躍をお祈り申し上げる次第でございます。

さて、本日は、「山城地域の更なる発展を目指して」というテーマで、最近の京都府や山城地域を取り巻く状況、また、様々な課題に対する京都府の取組状況等について、御説明をさせて頂きたいと思っております。

御承知のように、京都府におきましては、一昨年4月に就任致しました西脇知事の下で、昨年10月に、今後の府政運営の羅針盤となります新しい総合計画「京都夢実現プラン」と、山城地域における新しい「振興計画」を府議会の議決を頂き策定をしたところでございます。こうした中で、令和2年度当初予算を新しい総合計画のキックオフ予算と位置づけ、計画に基づき予算化した各種施策をエンジン全開で推進していくはずであったところでありますが、年明けから新型コロナウイルス感染症が発生致しまして、安心・安全な府民生活や円滑な社会経済活動に大きな支障が生じているところでございます。現在においても連日感染者が発生し、先行きがなかなか見通せない状況の中で、「コロナの感染拡大防止策の徹底」と「社会経済活動の段階的な回復」という相反する二つの課題にしっかりと対応していかなければならない、まさにブレーキを踏みながら一方ではアクセルをふかしていかなければならないという難しい行政運営が求められているところであります。こうした状況は、京都府のみならず府内市町村も全く同じでありますし、このような厳しい時代だからこそ行政機関と地域の方々との連携・協調がより一層重要だと思っております。我々京都府と致しましては、今後とも、こうした考えの下で府政運営に努めてまいりたいと考えておりますので、引き続きましての御支援・御協力の程、よろしくお願い申し上げます。

それでは、お手元の資料に基づき、まず、「山城地域の現状と課題」につきまして御説明申し上げます。

 最初は、「人口減少と少子高齢化」についてであります。「2040年問題」という言葉をよく耳に致しますが、我が国の人口がどんどん減少していくというトレンドの中でも高齢者人口がピークを迎える時期、これが2040年と言われております。団塊の世代ジュニアと言われる今40代後半ぐらいの年齢の方々が2040年には65歳以上の高齢者に入っていく。超高齢社会が一つのピークを迎えるこの2040年をどう乗り越えていくのか、今これが本当に大きな課題になっております。京都府に関するデータをちょっと紹介致しますと、直近の国勢調査が行われた2015年から2040年までの推計ですが、人口が約37万人減少(▲14.3%)する見通しとなっています。一方、高齢者は約9万人増える(+12.4%)という見通しです。人口が減少する一方で高齢者数は逆に増えていく訳です。出生数はどうなんだということで過去のデータを紐解きますと、1970年、大阪万博があった年ですが、京都府内で年間約41,000人の子どもが誕生しました。一方、直近の令和元年度を見ますと17,000人に達しない状況にあります。即ち、50年前と比べて生まれて来る子どもは半数以下になっている状況です。一方、平均寿命の現状をみますと、男性が81歳、女性が87歳という状況ですが、男女ともこの30年間で5歳以上平均寿命が延びております。こうしたデータからもわかるように、少子高齢化が年々着実に進行している状況にあります。また、別の統計数値を見ますと、2015年において1人の高齢者を支える現役世代は約2.3人なのですが、2040年にはこれが1.5人に減少する見通しです。つまり現役世代3人で2人の高齢者を支えていかなければならないという厳しい状況が待っている訳であります。ますます進みつつある超高齢社会をイメージ的に捉えると、「胴上げ型」から「騎馬戦型」、「肩車型」のように担ぎ手がどんどん減少していく。更には、「重量挙げ型」と言われるように、支える側が就職氷河期に直面した人々等に置き変わることによってますます非力になっていくというような状況になっております。2040年問題を克服できる社会システムをどう構築していくのか、我が国にとって本当に大きな課題であると考えております。

次に、「自然災害」についてであります。今年も7月豪雨が九州・東北等に大きな被害をもたらしました。先日の台風9号、10号は数十年ぶりの大型台風となったところであります。これまでの想定を超えるような自然災害が毎年全国各地で起こっている状況にあります。山城地域においては、平成30年の7月豪雨で甚大な被害が発生しましたし、平成24年から26年に発生した3年連続の豪雨災害では、平成24年の南部豪雨で、宇治市域において志津川で死者が発生したほか、木幡池や弥陀次郎川で大きな浸水被害が生じたところであります。こうした厳しい状況の下で、京都府でも河川改修や治山対策など様々なハード対策を進めておりますが、地球温暖化にも起因すると言われる想定を超える雨の量に対応するには多くの時間を要するハード対策だけでは十分とは言えず、避難対策をはじめとしたソフト対策も組み合わせて、府民の生命・財産を守るための災害対応に全力を挙げているところであります。

3つ目の課題は「新型コロナウイルス感染症」についてであります。全国で7万人を超える感染者が発生している状況です。この問題については、後ほど、もう少し詳しく説明をしたいと思います。

 以上、山城地域を取り巻く現状と課題について大きく3点を申し上げましたが、特に人口減少問題について、総務省の統計資料を用いてもう少し詳しく説明をさせて頂きます。本年8月に総務省が公表した「住基台帳に基づく人口動態調査」の資料を見ますと、我が国の人口は2009年をピークに減少し続けており、更にその減少幅が毎年どんどん大きくなっております。直近の1年間では減少数が初めて50万人を超える状況になりました。また、都道府県別の人口動態を見ますと、人口が増えたのは東京都・神奈川県・沖縄県の3都県のみ、44道府県はすべて人口減になっています。また、人口増の3都県のうち、自然増減でプラスとなっているのは実は沖縄県だけで、東京都と神奈川県は他府県からの流入人口が多いために人口増になっている状況であります。ちなみに東京・神奈川以外で流出人口より流入人口が多い府県は、埼玉・千葉・愛知・大阪・福岡の5府県となっています。こうした状況を見ると、依然として首都圏への一極集中が進むとともに、中京圏・関西圏・九州圏のそれぞれのエリア内でも大都市に人口移動が進んでいる状況がお分かり頂けると思います。

 一方、山城地域を見ると、全体ではこの1年間で2,456人の減少となっていますが、京田辺市・木津川市・大山崎町の3市町だけは人口増となっております。特に、京田辺市や木津川市ではどんどん人口が流入しているという状況です。一方で、最も人口減少が進んでいる地域は、笠置町・和束町・南山城村の相楽東部3町村でいずれも2%を超える減少率となっております。

このように市町村毎に差はあるものの山城地域全体では人口減少が進みつつある状況ですが、一方では、地域のポテンシャルを高める様々なプロジェクトが進められております。まず、交通インフラですが、平成27年に京都縦貫道、平成29年に新名神の城陽~八幡京田辺間が開通した結果、府域の南北140キロが高速道路で繋がりました。そして今、新たな横軸となる新名神高速道路とそれに繋がるアクセス道路の整備が着々と進んでおります。また、国の直轄事業ですが国道24号城陽井手木津川バイパスの建設が新規事業化され、これまで遅れ気味であった木津川右岸地域のまちづくりを支える基盤整備として大いに期待が寄せられているところであります。鉄道では、JR 奈良線の複線化・高速化第2期事業が進められています。令和4年には京都駅から城陽駅まで完全複線化が完成する予定です。交通インフラ以外でも、城陽の東部丘陵地の開発や学研都市の建設など山城地域の発展に繋がる拠点整備が進んでいます。東部丘陵については、長池地区及び青谷地区という2つの先行整備地区を設定し、新名神の全線開通を見据えて鋭意開発が進められております。長池地区ではアウトレットモールの建設が進められており、開業時には約150店舗、最終的には全国トップクラスの規模になる見通しです。また、青谷地区では、新名神に近接した利点を活かして物流拠点の整備が進められる予定です。また、学研都市でも着々と産業施設の立地が進んでおりまして、新たな企業の進出に応えられる用地がいよいよなくなってきているという現状にあります。更に、こうしたハード整備の他にもソフト対策として「お茶の京都」の取組みがあります。平成29年にお茶の京都博というイベントを開催したことを契機に「お茶の京都DMO」が立ち上げられ、今、「お茶」という山城ならではのキーワードの下で管内12市町村がしっかり連携しながら広域観光の取組みを幅広く進めているところです。以上のように、山城地域では、ハード・ソフト両面にわたり、将来の地域の発展に繋がる様々なプロジェクトが進められているところです。

それでは次に、こうした状況の中で、どのような方針の下で京都府政を進めているのかについて御説明申し上げます。冒頭に申し上げましたように、京都府では、昨年10月に新しい総合計画「京都夢実現プラン」と「山城地域振興計画」を策定致しました。更に、本年3月には、令和2年度から全国一斉でスタートする第2ラウンドの地方創生の取組みを効果的に進めるため、「第2期地域創生戦略」を策定したところであります。本日は時間も限られておりますので「京都夢実現プラン」と「山城地域振興計画」の重点施策について説明をさせて頂きたいと思います。

まず、「京都夢実現プラン」の重点施策ですが、行政課題がますます複雑・多様化する中で様々な困難課題に適切に対応していくためには、行政だけでなく府民・地域・企業等の皆さんと一緒に課題に対峙していくことが重要だと考え、「府民協働で取り組むきょうとチャレンジ」という取組みを目玉施策として掲げております。具体的には、①子育て環境日本一、②府民躍動、③文化創造、④新産業の創造・成長、⑤災害等からの安心・安全の5点でありますが、いずれも府民生活の安心・安全の確保や府域の活性化に向けた府政の最重点課題と位置付けているテーマであります。①「子育て環境日本一」については、西脇知事の一丁目一番地の政策でありますし、②「府民躍動」については、少子高齢化が進む中で社会の担い手を増やしていくための重要な政策、③「文化創造」については、令和4年の文化庁京都移転を機に文化の力で京都を元気にしていこうというもの、④「新産業の創造・成長」は、伝統産業と先端産業の共存、大学や研究機関の集積といった京都の強みを活かした産業振興策の一層の推進、⑤「安心・安全」については、まさに府民生活や社会経済活動の土台づくりというものであります。この5つの重点施策を「府民協働=オール京都」という枠組みの下で進めてまいりたいと考えております。

 次に、「山城地域振興計画」ですが、山城地域には乙訓を含め15の市町村があります。そこで、この山城地域を4つのエリアに区分して、それぞれのエリアの地域特性や持ち味を活かした地域振興策を進めていこうと考えております。宇治市域につきましては、「成熟しつつある都市エリア」に区分し、京都市に隣接している優位性を活かして都市機能等の更なる充実を目指していきたいと考えています。こうした取組みが新しい「山城地域振興計画」の重点施策でありますが、エリア毎にしっかりと地域振興策を推進すると同時に、それぞれのエリアを結びつけることによって山城地域全体の発展に繋げていきたいと思っております。このためには、市町村同士の連携・協調が大切ですし、何よりも我々広域振興局がコーディネーターとしての役割をしっかりと果たしていかなければなりません。例えば、新名神高速道路の全線開通を見据えながら府道宇治木屋線(犬打峠)のバイパス事業を進めておりますが、この事業が完成すれば、宇治田原町内のICから和束町役場まで僅か15分で結ばれることになります。まさに、新名神の整備効果を相楽東部地域の産業振興や交流人口の拡大に繋げようというものであります。このように、一つひとつのプロジェクトの効果を山城地域全体に行き渡らせるような創意工夫に我々は知恵を絞っていきたいと思っております。

 次に、最も深刻な今日的課題である新型コロナ対策の現状等について御説明申し上げます。現時点(9/15)におけるコロナの感染者数は、日本全体で77,000人超、京都府内で1,600人超、山城地域で約350人という状況であります。山城地域における第1波の感染者が90人程度でしたので、差し引き第2波が約260人、3倍近くの方が第2波で感染しているという状況になっています。こうした中、京都府では、年明けの2月定例府議会でコロナ対策の補正予算をいち早く編成して以降、現在まで、計6回に及ぶ補正予算を編成し、医療・検査体制の強化、経済・雇用対策、府民生活の安心・安全、更に、子ども達の学びの保障といった様々な分野の対策に組織を挙げて取り組んできたところであります。更に、今後のコロナ対策に活かしていくため、第1波と第2波の感染状況を様々な観点から点検・検証し、その結果、第2波の特徴として、①飲食を伴う会合に起因しているケースが多いこと、②若い世代の感染者が多いこと、③重症化リスクのある方への対策の徹底が引き続き必要であること、といった点が確認されたことから、飲食店への対策や大学生等への対策など、ターゲットを絞ったコロナ対策の強化に取り組むとともに、何としても医療崩壊を防ぐ観点から、医療提供体制やPCR検査体制の更なる充実・強化に全力を挙げているところであります。

 ところで、こうしたコロナ禍の中での今後の府政運営についてでありますが、先ほど申し上げましたとおり、新しい総合計画の策定時期が、新型コロナ発生前の昨年10月であったことから、これから続くであろうWITHコロナ・POST

コロナという社会情勢にフィットする計画に見直していく必要があります。このため、現在、庁外の方々の御意見も聞きながら、「WITHコロナ・POSTコロナ社会を見据えた府政運営の戦略」づくりを進めているところであります。とりわけ、産業振興対策については、冷え込んでいる社会経済活動のスムーズな回復とともに、WITHコロナ・POSTコロナ社会の中で京都産業の更なる発展を実現していくためには欠かすことのできない重要施策であることを踏まえ、①商店街・小売業、②伝統産業、③観光関連産業、④食関連産業、⑤ものづくり関連産業という5つの分野毎に検討会議を設置し、きめ細やかな対策の検討を進めているところであり、この検討会議には山城地域の関係者の方々にも多数御参画頂いているところであります。いずれにしても、新型コロナの完全終息には未だ相当の時間を要するものと思われますが、府民生活の安心・安全の確保と将来にわたる府域の活性化に向けて、職員が一丸となって府政を前に進めてまいりたいと考えております。

 折角の機会ですので、最後に「知事の施政方針」について御説明申し上げたいと思います。「施政方針」として、①現場主義を徹底すること、②前例にとらわれないこと、③連携にこだわることの3点を挙げておりますが、これは、西脇知事が一昨年4月の初登庁の際、職員に対する訓辞で示された内容であります。①「現場主義を徹底すること」については、西脇知事が国交省出身であり、同省がインフラ整備や災害対策を所管する現場重視の省庁でもあることから、「現場にこそ課題が隠されている」、「現場にこそ解決の糸口があるはず」との考えの下で府政を進めていこうというもの、②「前例にとらわれないこと」については、日々刻々と変化する行政課題に前例踏襲で対応できる時代ではなくなってきている中で、困難課題に大胆な発想で果敢にチャレンジしていこうというもの、③「連携にこだわること」については、庁内組織の縦割りの排除とともに、新しい総合計画にも重点施策として盛り込んでいるとおり、府民・地域・企業の皆さん等とともに新しい京都府づくりを進めていこうという思いが込められているもの、というふうに私は理解をしております。

 以上、色々と申し上げましたが、人口減少社会や自然災害への対応等をはじめ、これからは間違いなく「試練の時代」に入っていくと思います。こうした中で、京都府と山城地域の関係各位の皆様との緊密な連携・協働がより一層重要になっていくものと考えており、山城地域の更なる発展を目指して、本日御出席の皆様におかれましては、引き続き、京都府政に対する御支援・御協力を賜りますことを重ねてお願い申し上げまして、私の説明を終わらせて頂きます。

御静聴、誠にありがとうございました。

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