これからの図書館について

2020.11.19

宇治市中央図書館

館長 安田美樹

 ただいまご紹介いただきました宇治市中央図書館の安田でございます。宇治鳳凰ロータリークラブの皆様には、平素より本市の図書館運営にご理解とご支援をいただき誠にありがとうございます。また、本日は例会にお招きいただき、これからの図書館についてお話しをさせていただく機会を頂戴いたしました。このような場所で皆様にお話しさせていただくような立場ではございませんが、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。

 それではスライドと資料をご覧いただきながら、初めに宇治市図書館について、次に電子図書館サービスについてお話しをさせていただきます。

 こちらが中央図書館でございます。宇治市の図書館は昭和40年に市民会館図書室としてスタートいたしました。そして昭和59年に中央図書館が開館し、その後、平成4年に東宇治図書館、9年に西宇治図書館が開館し、現在は三つの図書館と木幡公民館、槇島コミニティーセンター、開地域福祉センター、南宇治コミニティーセンター、ゆめりあうじ、京都文教大学図書館に設置された6ヶ所の予約図書の配本所を拠点として図書館サービスを提供いたしております。

 平成28年から京都市の中央図書館、伏見中央図書館、醍醐中央図書館など19館も利用できるようになっております。

 図書館の年間来館者数は3館合わせまして28万9,078人となり、市の公共施設の中でもトップクラスの来館者数となっております。コロナ前は中央図書館で一日平均約550人が来館されていましたが現在は外出自粛もあり、随分来館される方は少なくなってございます。また、年間の貸出点数は70万7,595点となっており、こちらは年々減少している状況でございます。

 こちらは、中央図書館の成人書のコーナーでございます。

 こちらは、児童書、子供のための本のコーナーでございます。

 今年の春は、新型コロナウイルスの影響により図書館は約3ヶ月間の臨時休館を余儀なくされ、利用者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。現在もコロナ対策として閲覧席を以前の半分に削減し、カウンターや座席に飛沫防止シールドを設置しております。また、一日に1,000冊から2,000冊あります返却分を1冊ずつアルコールで拭いております。これがいつまで続くのかと思うと、もうため息が出るような状況になっております。

 それ以外にも、館内の一方通行や消毒液の設置、また、講演会やおはなし会のイベントで人数制限や検温などを実施し、感染予防に努めているところでございます。今後は、新しい生活様式に応じた図書館サービスが必要になって参ります。

 こちらが現在の貸し出しカウンターの状況でございます。ビニールシートで仕切りをしておりますので飛沫の感染は防止できますが、お互いにマスクをしておりますので利用者の方との会話が大変聞きづらいというところが難点でございます。

 こちらが館内の一方通行の様子でございます。見た目はあまりよくないですが、他所からお借りしたコーンで左右を分けております。

 こちらは、参考資料室の中の閲覧席です。以前はテーブルに椅子を4脚ずつ置いておりましたが、現在は手づくりの仕切りをした上で対面にならないように椅子を2脚にしております。この参考資料室というのは調べ物や研究される方がお使いになる部屋でちょっとお席は少ないですけども、今でも調べものをする方が沢山おられます。

 こちらは、コロナ後の朗読会の写真です。定員を減らして座席の間隔を広く取っておりますので、こうした写真を撮りますと少し寂しい感じになってしまいます。

 では、ここでお伺いしたいと思います。

 皆様は、図書館にどのようなイメージをお持ちでしょうか。

 答えは出ております。図書館は本を借りるところ、また、読書好きの人が行くところ、と思われる方が非常に多いのではないかと思います。ですが、実際は、貸し出しや読書以外の目的で沢山の方が図書館に来ていただいております。どのような目的かと申しますとレファレンス、調べ物、学習また新聞や地図、インターネットの閲覧だけに来られる方もありますし、おはなし会や朗読会の参加だけという方もあります。中には、特に目的なく来られる方もいらっしゃり、コロナ前は朝からお昼頃までずっと滞在されるという方もいらっしゃいました。また、図書館には初めから終わりまで全部読む本、言い換えますと読書のための小説などがございますが、必要なページだけを読む本や資料も多数揃えております。行政資料や住宅地図、電話帳、辞書、事典類がこれに当たります。

 こちらは、雑誌や新聞をご覧になるコーナーです。雑誌は毎年少しずつ購入数を減らしておりますので、3館合わせて現在は116タイトルになっております。近隣の図書館では約250タイトルもの雑誌があるところもございますので、今後は本市でも雑誌スポンサー制度を導入して、少しでも雑誌のタイトル数を増やしていければと考えているところでございます。

 こちらは、新聞を保管している棚でございます。

京都新聞ですと5年分。全国の主要5紙が2年分、洛タイ新報は、名前は変わっておりますけども昭和23年分からほぼすべてを所蔵しておりますので、お生まれになった日の記事がご覧いただけるのではないかと思います。

 こちらが、電話帳のコーナーです。全国の電話帳が揃っております。

 こちらに参考書籍があります。あらゆる辞書や辞典がそろっております。少しご紹介しますとあなたの一族大辞典、苗字8万読み方辞典、全国地名駅名読み方辞典、物理学辞典、難病辞典、絶滅希少鳥類の図鑑、世界鉄道百科図鑑、プロ野球70年史、数え方の辞典、日本方言辞典、日本の物語お話絵本登場人物索引、お茶の大百科、宇治の今昔などなど、沢山の参考書籍を揃えております。この部屋の本は基本的に貸し出しをしておりませんので、いつお越しいただいても閲覧していただくことができます。一度ご覧いただければと存じます。

 図書館では貸し出し以外に各種のサービスを行っております。

予約図書の配本サービスは移動図書館そよかぜ号の廃止に伴い開始したサービスで、事前に予約された本をお近くの公民館などで受け取ったり、返却したりできるサービスになっております。あまりご存知のない方が多いですが、大変便利なサービスでございますので年々利用される方は増えております。

 相互貸借は宇治市の図書館にない本を、府内の他の図書館から借り受けて貸し出しをするサービスでございます。府内の図書館にない場合は、他府県や大学図書館からお借りすることもございます。その他にも読書や生涯学習のためのイベントや取り組みを沢山行っております。

 こちらの写真が配本所へ本を運ぶ車でございます。

 本をいっぱいに車に乗せまして、6ヶ所の配本所を回っております。

赤ちゃんの泣き声が気になり、気兼ねして図書館に行けないと言われる方がいらっしゃいます。図書館では、どうぞ赤ちゃん連れで来てくださいという、「赤ちゃんタイム」を設けております。これは、その時のお話し会の写真です。

 こちらは、図書展示です。「僕らはみんな生きている展」というタイトルで動物や植物に関する本を揃えております。こちらの展示は「お茶にしませんか」というタイトルでお茶に関する本やリーフレットを集めた展示でございます。宇治市の図書館の特色としてお茶に関する本と源氏物語に関する本は重点的にそろえております。

 こちらは、25年前の阪神淡路大震災当時の新聞の展示でございます。震災発生からしばらくの間の1日毎の新聞をずっと貼っております。日を追うごとに被害の状況が明らかになる様子がこの展示でわかっていただけたと思います。

 これは、源氏物語講座の様子でございます。手話教室、外出自粛のストレスを吹き飛ばすためのヨガ教室といったものも図書館で行っております。

 こちらは、外国人講師による外国語のお話会の様子です。これまでにベトナムの方やブラジルの方、アメリカ人、カナダ人、イギリス人などの外国人講師の方に来ていただいて、子供たちに外国の挨拶や食事、服装、歌などの文化を教えていただき、外国絵本の読み聞かせを楽しみました。これは、非常に人気のあるイベントで80人、100人など大勢が来られるので、コロナの今は中止をしております。

 こちらの写真が、絵本の読み聞かせをする図書館の「読みメン5人組」でございます。今日、こちらにも1人寄せていただいております。これからは、他所へ出張しておはなし会などをしていきたいと思っております。

 レファレンスについて少しお話しをさせていただきます。

レファレンスとは聞きなれない言葉かもしれませんが、図書館の貸し出しと並ぶ基本的なサービスであり、利用者から相談を受けて調べ物に必要な、正確で体系的な資料を探すお手伝いをするサービスでございます。ここでは、実際に寄せられた質問等を紹介しております。「茶団子の作り方が知りたい。」、「相続で困っている。」、「菟道小学校にあった防空壕は誰が作ったのかを調べたい」など素朴な疑問から調査研究のための相談まであらゆる質問が図書館に寄せられます。最近ではこうした調べものにインターネットを使う方が多くなっておりますけども、インターネット上の情報は信頼性に欠けるものも沢山含まれております。信ぴょう性の高い答えをお求めの場合は出典が明らかな参考資料を使って答えを導く図書館のレファレンスをご利用いただければと思っております。

 図書館の主な役割は読書や学習の支援、また資料の収集、提供、保存などでございます。ここでは少し保存についてお話します。

 日本では毎年7万点とも8万点ともいわれる膨大な出版物が発行されますが、それが全て本屋さんに並ぶわけではなく、短期間並んで売れなかったらすぐ返本されるようにお聞きしております。返本され、どんどん絶版となって、二度と本屋さんでは手に入らないという本が沢山ございます。実際に、定価が800円の本が絶版となって、書店では手に入りませんのでインターネット上で今16,000円で売られているケースがございました。こうした絶版図書が図書館に残っているということが非常によくあります。この800円の本も中央図書館が持っていました。また、地域について書かれた本は小さな出版社から出されることが多いため、出版数が非常に少なくなっております。気が付くとその地域にもう1冊も残ってないと言うことにもなりかねませんので、このような本を確実に入手して後世まで保存すると言うことも図書館の大切な役割となっています。

 宇治市の図書館の課題についてお話しいたします。

 まず、1年間に1冊以上の貸し出しをした方は市民の10.3%であり、残りの9割の方は図書館を利用されておりません。また、利用者のうち65歳以上が3割を占め15歳~30歳までの若年層は4%にとどまっております。さらにインターネットの普及などにより、来館者や貸出件数は減少を続けております。それ以外にも、今はどこの図書館にもある視聴覚席が宇治市の図書館にはございません。ですので、DVD やデジタル化された資料の視聴ができないということになっております。これは、図書館が開館した約35年前にインターネットが普及していなかったため、建物がインターネットに対応していないと言うことも一つの要因でございます。さらに、外国語の本が読みたいという利用者からの要望にもお応えできておりません。

 そして、大きな課題となっているのが蔵書を収蔵するスペースが限界に達していること、もう一つが蔵書冊数が全国で最下位であるということでございます。

 こちらが床にまで本が溢れた書庫の様子でございます。これ以上本を入れるところがございません。

 こちらは、全国の同じ人口規模の自治体51市を比較したものです。本市図書館の延べ床面積、蔵書冊数は51市中最下位でございます。図書購入費も47位ということで平均を大きく下回っております。現在はこの蔵書冊数を最下位から一つでも上にあげて、人口1人当たりの蔵書冊数、1.74冊を、何とか2冊にまで増やしたいということを目標にしております。それには、何万冊もの蔵書を増やす必要がございます。図書購入費が年々削減されている中、最下位を脱出するというのは到底叶わない目標となっております。

 近隣の図書館と比較いたしましても、人口1人当たりの蔵書冊数は、本市は1.74冊ですがお隣の城陽市はおよそ4冊、久御山町はおよそ9冊、京田辺市がおよそ5冊などとなっており、ダントツのワースト1位という状況でございます。

 それ以外のサービスにおいても、本市の図書館は大変苦戦をしておりまして、まずスペースがない、本がない、お金がないという厳しい現状で運営をしているところでございます。

 これらの課題を一定解決できるのが電子図書館でございます。これまで図書館を利用していなかった9割の方やスマホをいつも持っている若い方の中に電子書籍なら借りてみたいと思う方がいらっしゃるだろうと考えております。また、これまで図書館になかった外国語の書籍がご覧いただけるようになります。さらに、スペースがいらない電子書籍であれば冊数を大きく増やすことができる、と期待をしているところでございます。

 ここからが、本日の主題となります電子図書館のお話しです。

 こちらが、パソコンで電子書籍をご覧になるイメージです。本の表紙とタイトルがわかりやすく表示されています。電子図書館とは、タブレットやスマートフォンからインターネット上の電子図書館にログインしていただくと、本の貸し出しや返却ができるというサービスでございます。

 いつでもどこでも利用することができ、ポケットにスマートホンがあれば何冊もの本を読むことができます。通勤や出張、旅行に重い本を何冊も持っていく必要がなくなる、とお考えいただければと思います。また、図書館に来館する必要がなく、他の人が触った本に触れる必要がありませんのでコロナ対策として導入する図書館が増えてきております。

 ただし、今の図書館にある本が電子図書館で見られるようになるというわけではございませんので、その点はご理解をお願いしたいと思います。

 電子図書館のメリットは貸出し期限が過ぎると自動的に返却されることでございます。したがって、延滞がございませんので図書館にとっては督促が不要となります。また紛失や劣化もありませんし、スペースも不要でございます。また、市内に1冊しかない貴重な郷土資料や劣化した地域資料等は、今は貸し出しができませんが、電子書籍にすれば皆さんにご覧いただくことができます。

 一方のデメリットでございます。実は、電子図書館サービスは非常に課題が多いサービスだと言われております。その理由として、電子図書館サービスが新しく、確立していないということと、インターネット上の法整備が整っていないということが挙げられます。人気のある本を電子書籍化しますと違法にコピーされて無料で配信されます。これらからは広告収入を得られるため、違法サイトは後が立ちません。当然紙の本は売れなくなりますので、出版社は電子書籍化をするのを嫌い、なかなかしてくれない、と言うことになっております。特に文学は少なく、人気作家の本やベストセラーはなかなか電子書籍にはなりません。さらに、図書館利用の多くを占める高齢者の方は、インターネットや端末操作に不慣れな方が多くいらっしゃいます。こうした方にも馴染んでいただきたいと思いますので、図書館にデモンストレーションができるような大型のディスプレイを置いて、貸し出しのついでにちょっと見ていただいて体験していただければ、と考えておりました。残念ながらディスプレイの予算がつきませんでしたので、現在、何か良い方法がないかと頭を悩ませているところでございます。こうした事情から、全国の自治体で電子図書館を実施しているところは、わずか100館程度にとどまっております。

 では、どうして課題の多い電子図書館を導入するか、と申し上げますと、紙の書籍、電子書籍を問わず1人でも多くの方に本をお届けしたいから、ということでございます。今回、電子図書館が国のコロナ対策交付金の対象となるということですので、この先、外出の自粛要請や自然災害などによる臨時休館があった場合でも、図書館に来館せず本を手にとっていただくことを目的としまして電子図書館サービスを実施することになりました。

 どんな人に使っていただきたいか。

 電子図書館は本の種類や数が圧倒的に少ないため、全ての方には満足していただけませんが、図書館に行きにくい方やこれまで利用していなかった方に是非ご利用いただきたいと思っています。

 どんな本をそろえるのか

 今、考えておりますのが調べ物のための参考書籍や実用書、ティーン向けのライトノベル、絵本や調べ学習の本、外国語の本、種類は少ないですが文学やエッセイ、著作権の切れた昔の名作も揃えたいと考えております。例えば、旅行に行かれる場合、紙のかさばるガイドブックではなく、電子書籍版のガイドブックを持っていかれますとスマートホンに入りますので、身軽で快適な旅行をしていただけるのではないかと思っております。

 利用するのはどうするのか。

利用していただけるのは、宇治市にお住まいの方、在学在勤されている方で宇治市図書館の貸出券をお持ちの方に限ります。お1人二点を2週間まで借りていただく予定としております。また、電子図書館の開始予定は来年の3月でございます。

 電子図書館の使い方について、今日はスライドで簡単にご説明をさせていただきます。なお、これからご覧いただく電子図書館はあくまでも参考でございます。本市の電子図書館はこれから入札をしますので落札する業者によってはこの画面と異なる電子図書館になる可能性がございますのでご了承いただきたいと思います。では、電子図書館を見て参ります。

 電子書籍がテーマごとに表示されております。今日は、料理と食事のコーナーから「有元葉子の和のお弁当」を選びます。次に本の右側、ブルーになっている「借りる」というところがあります。それをクリックしていただきます。そうしますとマイページに、これまで借りた本が全部表示されます。その中から読みたい本の右側の「ブラウザですぐ読む」というところをクリックしていただきますと本が表示されます。このページは見開きのページになっておりますが、1ページずつ見ていくこともできます。ページめくりは画面の端をクリックしていただくとページがめくれるようになっております。途中で読み終える時は左の上にある×、これをクリックしていただくと本が閉じられ、次にもう1回読もうかなというときに、今読んでいたそのページが開く、ということになっています。ここまでが電子書籍の簡単な使い方でございます。

 電子書籍が日本で普及するまでにはまだまだ5年10年が必要であると言われております。それでも図書館の規模が小さく予算の少ない本市の図書館は、電子図書館サービスを普及させたいと考えております。宇治市電子図書館が3月に開設されましたら、本日ここにいらっしゃる皆様にもぜひご利用いただきたいと願っております。

 最後になりますが、日本では知識基盤社会の進展やAI 技術の進化、また ウイズコロナなど社会が大きく変化しております。これに伴い我々は新しい知識や情報がこれまで以上に必要になって参ります。今後の図書館は、貸し出しを重視する図書館から皆様のお役に立てる図書館になれるよう様々な情報やサービスをお届けして参りたいと考えております。

 どうぞ皆様、これからも図書館をご支援していただきますようよろしくお願いいたします。

 以上で、これからの図書館についてのお話を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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