辻占見徳

念仏寺 代表役員

京都八幡RC会員

ガバナー補佐

福井 純史

1.辻占とは

日本独特の占いの一つ。別名「橋占」「夕占」「黄楊占」とも。道端、十字路、橋のたもとで、占い師ではない庶民たちが、自分で自分の吉凶を判断する占い。

辻占…本来は大きな十字路、四つ角で行う。橋のたもとで占う橋占も含めて辻占と呼ばれていた。

夕占…黄楊占とほぼ同じ。夕方に道端で行うもので、黄楊占いは黄楊の櫛を使う。黄楊の櫛を髪から外し、櫛の歯を三回指で鳴らし、その後そこにやって来た人たちの話で占う。…黄楊=告げ・櫛=呪術的な物(神宿る)。櫛→くじ

占い方→自分自身が知りたい答えを道行く人らの会話に求める。夕占の場合、酉の刻(午後6時前後)の会話を答えとした。橋占の場合は、橋のたもとに立ってから3組目に通った人たちの会話とされていた。通りすがりの何気ない会話が対象。…会話の内容が大事ではなく、一部聴き取れた言葉、会話している雰囲気、姿・形などが重要。それらを合わせて判断する。

例)今お付き合いしている人との結婚について…道行く二人連れの会話で「やめた方がいいよ」とか「あかんあかん」という言葉が聴こえたりすると、結婚には慎重になった方が良いとの判断。

→最初から疑ったり、遊び半分ですると効果はない。偶然性を重要視した占いなので、真剣に行わないと、的確な解答は得られない。

辻(交差点)は人の往来する場所とともに神の通り道とされた。辻占で出た内容は賽の神・道祖神の託宣と理解された。

2.辻占の歴史

・辻占の歴史は古代。万葉集に登場する。一条戻り橋は辻占の一種「橋占」(橋のほとりに立って、行き交う人たち言葉で吉凶を占う)の名所。安倍晴明は式神を使って占わせたといわれる。

・江戸時代には辻に子供が立って、託宣を書いたおみくじを売るようになり、これも辻占と呼ばれる→花街などで売られる→当初の辻占とは形態が違ってきている。

・明治末ごろ、東京の辻々に自動辻占箱が現れ、箱の穴に1銭入れると占い札が出るようになっていた。これがよく売れて日本全国から中国や朝鮮にまで箱が設置された→喫茶店などにあったルーレット式おみくじ(カプセル式も)もその進化系か。現在でも神社には、巫女や獅子舞がおみくじを持ってくるからくり式自動販売機も設置されている。

「吹雪の夜の辻占売りの少女」「雪の中の辻占売りの孝行息子」等など、子供が親の代わりに家計を助けるために、学費の足しにと辻占売りをしている様子を、児童教訓の話として紹介されている。

・国民学校の女の子に、生活が苦しいからといって毎夜花街に出て辻占売りをさせていることが常態化→好ましくないので警察から注意喚起あり

「辻占を売る少年」(明治初期)

3.辻占菓子

明治中頃の書物に「辻占は、元来四ツ辻に立って道行く人が言う言葉を聞き取って、運気・縁談・待ち人などを占うことをいったが、何分往来の人の話を聞くのは不便であるからか、今日では辻占も進歩してきて、河内の国の瓢箪山からどんどん輸入してくるばかりか、あぶり出しの辻占だとか、煎餅の辻占、巻きたばこの辻占、辻占豆、辻占香だとかいろいろな辻占が出来ている」とある。

実際に人に占ってもらう辻占→おみくじや、おみくじつきの煎餅に様変りしてくる。

辻占煎餅…巻きせんべいやかりんとうに占いの紙をはさんで売られるようになった。

・明治・大正期には辻占売りと呼ばれる行商人が花街などで辻占菓子を売り歩いた。昭和に入っても料亭やカフェなどで売られ、酒の合間の娯楽として流通した

「辻占煎餅づくり」

・金沢では正月の縁起物として家族で楽しむ風習

・伏見稲荷大社→辻占菓子を年中売られている。

・明治期、サンフランシスコに渡った山形出身の実業家萩原眞が、日本庭園内で開業した喫茶店で、煎茶とおみくじ入りの瓦煎餅を販売した。

・戦前にはカリフォルニアの中華レストランで、食後におみくじ入りのクッキーがサービスで出された。好評につき次第に各地に広がっていった→フォーチュンクッキー…辻占菓子が元に。

4.落語の中の辻占

「辻占茶屋」

難波新地のお茶屋の娼妓梅乃を身請けしようと思い立った源やんは、叔父から忠告されるが、

聞く耳を持たず、お茶屋に行こうとする源やん。叔父さんはアドバイスを送る。

「辻占見徳ちゅうことがあるやろ。せやからいっぺん辻占見徳を占のおてこい。最初に聞いた言

葉を辻占見徳にすんねん。ええ言葉やったら会うてこい。悪い言葉やったらこらすぐ帰っといでや」

源やんはお茶屋で暇つぶしに、座敷に残された辻占菓子の捨てられていたおみくじを拾い上げたり、未開封のものを食べたりしておみくじをいくつも読むが、あまり幸福が感じられない文面ばかりで、源やんは落ち込む。「見徳」→前兆・前ぶれ

5.瓢箪山稲荷と辻占

○辻占総本社

明治初め頃に宮司が辻占を始めた。

「淡路島通ふ千鳥の瓢箪山恋の辻占いらんかへー」の売口上とともに、辻占売りの少女が活躍。

○辻占の方法

神社受付窓口でおみくじを引く→神社裏手の占場に進み、通行人を観察→出たおみくじの番号に通った人(3だったら3番目の通行人)の性別・年齢・服装・持ち物・発した言葉・どっちの方角から来てどっちに向かったかなどを、社殿に帰って宮司に報告→判断(四柱推命を加味して総合的に)

●三種の占い

①普通のおみくじ

②やきぬき…紙の中央の「火」と書かれたところに線香やマッチの燃え残り火を当てる→火がゆっくりと走り、いずれかのおみくじを囲むように焼き抜く→焼き抜かれたところがおみくじの結果

③あぶりだし…ロウソクやコンロであぶりだしを火に近づける→おみくじの文言が翡翠色に浮かび上がる→冷めると消えるが、またあぶりだすことができる。

6.まとめ

本来の辻占は、偶然居合わせた人の言葉や会話であるけれども、その発せられた場所が、神様の通り道である十字路、この世と冥界の境界である橋であることで、神様の託宣と捉えることができ、より信ぴょう性があると考えられた→偶然性が神秘性につながり、六曜が重宝される要因に。

辻占は近世以降、形はおみくじや辻占菓子などに変ってきているが、瓢箪山稲荷では現在も昔ながらの作法によって続けられている。

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