市民による奈良の伝統行事の創造

2016.9.1 市民による奈良の伝統行事の創造

株式会社読売奈良ライフ

代表取締役社長 朝廣佳子

皆さんこんにちは。本日はこの宇治鳳凰ロータリークラブ例会にお招きをいただきましてありがとうございます。井上プログラム委員長から過分なご紹介をいただいて、ハードルを上げていただきまして恐縮でございます。本当に井上さんには地区で大変お世話になっておりまして、お願いされたからには何があっても駆けつけようと思って、今日来させていただきました。本日頑張ってお話させていただきます。よろしくお願いいたします。

奈良の行事についてお話をさせていただきます。タイトルが「市民による奈良の伝統行事の創造」という非常に堅苦しい名前を付けましたけれども、平たく言えばですね、「京都に負けないように頑張る奈良」というような内容でございます。私は奈良が京都に劣っているとは思っていません。やはり、それぞれの魅力というのは土地、土地によってあると思っております。ただ、京都が素晴らしいのは、宣伝力と、団結力ではないかと。経済界とか寺社などが一丸になって京都のPRをされているというのはいつもうらやましいな、素晴らしいなと思っております。京都に負けないように、奈良市民が頑張って新しいお祭りを立ち上げましたので、そのご紹介をさせていただきます。

普段、私は奈良の地域情報誌を作っております。また、ホームページの制作とかキャラクターデザインとか、そういった制作の会社でございます。その傍らで青年会議所の理事長をさせていただいた時に燈花会を立ち上げました。

「なら燈花会」というのは、このカップに水を3センチぐらい入れましてろうそくを浮かべます。これが並んでいるという非常に単純なお祭りでございます。「燈花」というのは灯りの火じゃなくて、灯りの花と書きます。この「燈花」の意味はろうそくの心が燃え尽きた後に花びらのようになると縁起がいいという説がありまして、「会(え)」というのは修正会(しゅしょうえ)とか、修二会(しゅにえ)とか、宗教でよく使われますが、人が沢山、集まるという意味です。沢山の人に集まっていただいて、その皆さんが幸せになりますようにという意味で燈花会と言う名前をつけました。どんなお祭りかと言いますと毎年、夏の8月5日から14日までの10日間、奈良公園一帯に毎晩ろうそくを2万個を燈す灯りのお祭りです。 NPO 法人なら燈花会の会が運営しておりまして、10日間お手伝いいただく当日サポーターは、延べ約3300人です。ボランティアは幼児から高齢者までいろんな方が一緒にやるという内容でございます。来訪者数は始まった当初は一日雨が降って9日間で17万5000人、カウンターで数えた数字です。ロウソクの数も最初6000個からスタートしまして今、2万個になっています。観光客の数も今は90万.今年91万1000人の方にお越しをいただきました。実際にどんな風景なのか、お手元に燈花会の今年のチラシも配布をさせていただいています。

奈良公園がいくつかの会場に分かれています。まず、浮雲園地。名前どおり、浮雲のようにデザインをしております。これは決して合成写真ではなく、一番最初に燈花会を立ち上げるときに試験点灯で並べて撮影した写真です。クレーンで上から撮りました。最初、お金がなかったんですけども広報だけはお金をかけようということで撮ったものです。このカップが4000個並んでいます。

次は浅茅が原と言いまして、竹灯りのエリアとなっております。

3番目は鷺池と浮見堂です。

4番目が猿沢池、名前は聞いたことがあると思いますがこちら池の周りに並べております。今までの4会場が最初の3年間の会場だったんですが、人が30万人ぐらいになり、滞留して危ないなということで会場を増やしました。奈良国立博物館、そして春日野園地という大仏殿の鴟尾(しび)が見える会場です。、また、興福寺、東大寺、春日大社の3社寺です。東大寺は8月13、14日のみ、春日大社は8月14日のみ照らしております。

ところで、なぜ燈花会ができたかと言いますと、奈良にはその燈花会が始まる10年前、1998年の頃に奈良まつりというお祭りが行われておりまして、それは私が入っている青年会議所とか、商工会議所青年部などが中心になってやるお祭りだったんですが市民ステージ、市民の模擬店、それだけでは人が呼べないのでタレントさん、芸能人、歌手を呼ぶというようなお祭りで、市民の方には喜んでいただいたんですけども、「奈良らしくない」。で、何とか奈良らしいお祭りができないかということで生まれてきたのがこの燈花会です。で、その燈花会を始めたわけですけども、始めてすぐこの三社寺からは反対されました。そもそもなぜ8月の最初に燈花会を持ってきたかと言いますと、東大寺と春日大社では8月14日~15日に火のが伝統行事をしております。春日大社の万燈籠、東大寺万燈供養会.そして8月15日には奈良にも大文字、送り火があります、自慢はちょっと京都より大が大きいということです。これらの伝統行事に合わせて何とか新しい奈良のお祭りがつくれないか。市民まつりではない本当に奈良の良さを観光客の方に伝えられるお祭りがつくれないかということでこの8月の14日、15日、そこに合わせて、前10日間からの開催で始めたわけなんです。ところが燈花会が始まると万燈籠と燈花会を間違える方が結構多くて、燈花会を見て、万燈籠も大きくなったなと言って帰っていく。歴史ある万燈籠と一緒にされることに、春日大社さんが激怒されました。で、こんな祭りはすぐやめろ、大体、火を冒とくしている。神様にささげる火と言うのは精進潔斎をして、ささげる。本当に神聖な火なのに、我々庶民がつける火と一緒にするなということですぐやめろと言われました。1年目ですぐ辞めなさい。あんたは伝統行事を潰す気かと叱られました。でも1年目やってみて17万5000人もの方に来ていただいた。実際やってみて本当にやっている我々が心温かくなる美しい祭りで、もっともっと多くの方に来ていただきたいという素晴らしい光景です。これを何とか続けたい。2年目もやりました。もちろん、すごい怒られるんですけども、何とかやらせてくださいということで、春日大社さんに行くその参道。それから東大寺の大仏殿に行く参道にずっとカップを並べていました。そうすると人って灯りに誘導されていくんですね。行ったら大仏殿は閉まっている。春日大社も閉まっている。で、がっかりして帰られるんです。それを見ていた東大寺さんが「うちも8月の13、14で15日は万灯ろうがあるので13、14の2日間燈花会に合わせて大仏殿の夜間拝観をやりましょう」と言ってくださったんです。それに合わせて興福寺さん、春日大社さんも了承して会場にしてくれました。春日大社では若宮様が会場になったのですが、チャッカマンとろうそくをお祓いしていただいて、そのカップを並べて、お祓いしたチャッカマンで火をつけた。初めてそれで3会場が燈花会の会場になりましたそれ以降、ずっと会場なんですが今は、春日大社は参道に並べさせていただいています。。

また、奈良公園の会場以外に、3年目から奈良町が会場に加わりました。昔の町家の風情が残る界隈です。この奈良町が自治会単位で燈花会をやっていただいています。奈良町に燈花会をしにきてくれと言われたのですが、とてもじゃないけど人がいないので、カップをお貸しするから自治会で並べてください、ってお願いをしました。

そうしたら結構、高齢者の方が住んでいらっしゃるのですけれども、皆しゃぁないなとしぶしぶ出てきて並べるうちに、今まで家に引っ込んでいた人が表に出てきて、町が皆仲良くなったわ、大変だけれども楽しいと言っていただけました。中新屋町というところがあるのですけれども、自治会で一日だけ「中新屋バー」というバーを開くのです。知り合いのバーテンダーさんを5人くらい呼んできて、1杯500円で、燈花会のカクテルを売ったりとか、そういうことを中新屋町はされて賑わっております。

燈花会を始めるときに、奈良らしい祭って何だろうと、皆で話をしました。

よく奈良らしさ、京都らしさ、何とからしさを出そうと言いますけれども、じゃあその「らしさ」って何なのだろうか。

9人で「祭を考える会」というのを作りまして、奈良らしい祭って何だ、ということを話しました。

さっきの「なら祭り」も、先輩方が10年間頑張ってこられた祭で、それをやめてやるわけですから、本当に真剣に考えないといけない。

奈良はだんじりとかがない、静かな祭が多いんです。

「采女祭」という9月の中秋の名月あるお祭とか、大きいものでは春日若宮おん祭りとか、そういうのが伝統行事なのですが、静かなお祭で賑やかなお祭がない。

世界遺産が多いですから花火も禁止で、打ち上げていい花火は若草山の山焼きのときだけなんですね。

花火の火の粉が落ちても後は山を焼くだけなので、大丈夫なんです。でもどうしても花火をやりたいとか、皆からそういう意見が出ました。じゃ外の人が奈良に求めているものは何なんだろう、ということを、色々なデータから調べると、一番が「癒し」で、二番が「静けさ」。

外の人が「癒し」「静けさ」を求めているのに、他で同じようにやっているだんじりを、

いきなり歴史もないのに始めることに意味があるんだろうか。

で、灯りを奈良公園に並べてはどうかという案を、当時の県の観光課長が持っていて、それを聞いたときに、絶対これは奈良に求めていることと合う、それもさっき言った火の伝統行事と合う。

これを具現化させようということを言ったのですけれども、皆からは地味や。

そんなろうそくを何千も並べるような辛気臭い祭、誰が来るんやと大反対でした。。

その当時は、若者が奈良コンプレックスで奈良ナンバーの車にも乗りたくないとか(笑)、奈良でご飯を食べるとか奈良で買い物をするとダサいとか、そんなことで「奈良離れ」していました。

こんな祭をしたら年寄りだらけになると、皆が否定する中、

「どうしてもこれをやりたい」と私が言うと、「そんなにやりたいんやったら、お前が実行委員長でやれ」と言われて、当時青年会議所の理事長をしていたので、青年会議所中心に始めたのが第一回目です。

やるんだったら基本をしっかり押さえよう、ということで、一日だけやるんじゃなくて、土日が2回入る10日間やろう。

1ヶ所だけでなく、奈良公園4会場で、それもそれを誰が並べるんだということで、我々だけでは無理なので、市民の方々を募集しようと

カップもガラスだったり、色々実験をしてみました。

結局、10日間やるので毎日並べて、毎日片付ける。軽くて、火に強いもの。

たまたまこういう素材で作っているものが、「祭を考える会」の中におりまして、こんなのがあるんだということで、何の変哲もないカップなのですが、わざわざ型を作って作ったものです。

奈良公園って、火気厳禁なんです。

じゃあ奈良公園にいったいどうやって火を並べるのか。

それで、水を入れてろうそくを浮かべれば、ちょっと揺らせば消える。

これで消防署のほうも、許可を取ることができます。

当日10日間、今だったら2万個ですけれども当時6000個、運営方法ですが、まず当日サポーターを募集して、好きな日に登録をしていただきます。

その日に来ていただくと、皆さん会場に分かれていただいて、カップを並べていきます。

鹿が(笑)ひじょうに上手いこと「手伝って」くれる(笑)。なら

いいんですけれど、カップの水を飲みに来るんです。

なのでせっかく一生懸命に並べた会場で、ふと後ろを見ると全部倒れている。

最初はまだサポーターが1会場につき数十人と少なかったので、また必死で並べました。

片づけをしようとしたらダンボールも全部食べられて入れる箱がないとかですね(笑)。

途中看板がわりに急いで紙に書いて貼っておくと、その看板も食べるとか。最初はわかっていてもつい忘れるんですね、鹿に食べられるということを。

ちなみにろうそくも食べます。

だからカップにろうそくを浮かべるのは、着火の直前に入れます。

そして。ろうそくは最初石油系だったのですけれど、今は植物系に代えております。で、7時になったら着火をしております。

夏休みなので、子供たちの参加も非常に多くて、非常に頑張ってくれます。

そして9時45分になると消灯して、燃え残りのろうそくはリサイクルにまわします。

こういうふうにすべてコンテナボックスに戻して、何もなかった状態にして1日が終わる。また次の日は次のサポーターが風景を作る、ということを10日間繰り返すわけです。

すごい大変だなと思うでしょうけれども、実は片付けは皆早く帰りたいので結構早いです。あっという間に片付きます。

そのほかにも、裏方の仕事は会員が販促とか経理とか広報ということをしております。

全部終わったら、後日、皆でカップを洗います。煤を取って綺麗にしないと真っ黒なので、こういう仕事も会員でやっています。

燈花会をやって学んだこと

まず、マイナス要素が実は宝物になるということです。我々は最初は奈良公園というのは負だ、マイナスだと思っていたんです。

真っ暗で、何もない。

京都みたいに整備されていて、夜でも美しくライトアップされていたら、もっと宿泊客も増えるのにな、と思ったのですが、実は真っ暗闇で静かだからこそ、この燈花会が成功した、というふうに思います。

だから、灯りを見せるというよりも、暗闇を「魅せる」お祭だというふうに思っております。

それから、景観はブランド化できるということ。

何か面白いイベントを作るのではなくて、風景を造る、それ自体が燈花会のブランドになっている。

なので後でとりかかった天平祭も、景観はブランド化できるということをコンセプトにして造っていったんです。

そして、スケール感にこだわるということ。

最初から1日1会場・4000個だけでスタートしていたら、なかなかここには到達しなかったと思います。

途中、京都の花灯路さんが視察に来られました。

花灯路さんは燈花会のあとに始まったのですが、見事に燈花会の10倍以上の人が来ています。JRとか近鉄が出すお金も、私たちのケタと0がひとつ違うくらい。

羨ましいとは思うけれども、最初から4会場10日間やっていたから花灯路に埋もれることなくここまで来たのではとと思います。

次に本物にこだわったから良かったかなと。本本物の火は、人々の心を癒します。そこにこだわっていることが大事なんだろうと思います。

また、それだけ火をつけるボランティアの数では、花灯路には負けていません。

それから、外からの視点に目を向ける。

外の人が、奈良をどう思うか、何を望んでいるのかっていうことが大事。

そして、ストーリーですね。

単なるイベントではなく、「祈り」というコンセプトを持って、1年に1回、誰かのために祈る、そういう場にしましょうということをお伝えする。

それから、長期的な視野に立つ。

始めたときにすぐ、中長期委員会という組織を作って、5年後10年後にはどうするか、ということを一緒に話をしながら、単年度ですすめていきました。

それから、観光客にも作り手になってもらう。観光旅行に来て当日サポーターに参加をする人たちが増えていることです。観光客が観光客を迎える、それがおもしろいと言って

毎年宿を取ってサポーターをする人もいます。

そして、ボランティアのおもてなしの大切さ。

こんなにたくさんの火をつけているのは、

私たちボランティアですと言うと、来られた方がそこにまた感動していただけて、やっている側も、自分たちが造った風景が、こんなにたくさんの方に喜んでいただいているという両方のホスピタリティを感じるお祭りだと思います。

最後に、行政の役割は黒子であること

燈花会でよかったのは、行政が前に出ず、後ろでバックアップをしていただいたことです。

表舞台を市民が造っていったというところが、長く続いて大きくなっていった要因ではないかなと思っております。

最後に天平祭について一言ご紹介を。平城遷都1300年祭を2010年に、世界遺産の平城宮跡で行いました。その後、大極殿の前でこういった本格的な天平行列をしております。

これは奈良だからこそできる、奈良だからこそ残さないといけないお祭だと思って、これもすべて市民が運営しております。

衣装もボランティアたちが、正倉院の文書とかを参考にしたり、先生方のご意見を聞きながら、造っております。

京都も宇治もいいですけれども、奈良にも素晴らしいところがたくさんありますので、ぜひ奈良にも足をお運びいただきたいと思います。きっと、おもてなし度満点の市民が皆様をお迎えいたします。

今日はどうもありがとうございました。

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