宇治川ドラゴンボート

2018.4.26

サンケイスポーツ営業局・日本ドラゴンボート協会事務局長    

谷達也

メインの方はうちの副理事長の菖蒲の方からお話させていただきます。私は今から7年前に地元のある団体の方からこの宇治でドラゴンボートができないかとお話を聞きまして、できるかな?ドラゴンボートは実は龍の舟ですね。ですからドラゴンボートなんですけどもスポーツの要素と龍という文化的要素と二つ持っています。ボートとかカヌーというのは失礼ながら伝統はありますけれども競技的要素が中心ですね。ドラゴンボートはなんじゃろなっというのがあると思います。今申し上げたようにスポーツ的要素と龍という文化的要素が。7年前こちらの宇治川のほうに見させていただいたら、ちょうどいい宇治川の横にいいコースがあって、そこを使用しようじゃないかということでうまくいったわけです。あと、まあ、これもたまたまなんですけども、ご存知のように山の方には龍を祀る神社があり、そして平等院にも龍が、やはり鳳凰がおられるということですね。この辺、ドラゴンボートというのは紀元前3世紀のお話ですけども、そのあたりのスポーツと文化の両面にわたってこのドラゴンボートが営々とアジアを中心に世界に普及してきたということを菖蒲のほうから本日はスピーチさせていいただきますのでどうぞよろしくお願いします。

「ドラゴンボート競技の社会的意義とアジア・国際ドラゴンボート連盟の現状」

日本ドラゴンボート協会副理事長・アジアドラゴンボート連盟常任理事

菖蒲 誠

皆様こんにちは。本日は宇治鳳凰ロータリークラブさんへお招き頂きまして誠に有難うございます。先程、安井さんの方からご紹介いただきましたが、私の専門は国際関係学、その中で「アメリカと日本のリーダーシップの取り方の違い」について研究しています。今日は日本ドラゴンボート協会の立場から、ドラゴンボートとスポーツの重要性に関することを含めてお話をさせていただきたいと思います。

2019年にラクビーのW杯、20年は東京五輪、そしてパラリンピックですね。更に、21年にはワールドマスターズゲームが関西で行われます。このような国際大会が相次ぎますので、2019年からの3年は「ゴールデンスポーツイヤ-ズ」というふうに言われております。スポーツによる地域や社会の活性化が注目されている中で本日は「ニュースポーツ」、ドラゴンは先程、谷のほうが申し上げましたがお祭り行事としての歴史はありますけども、スポーツとして世に誕生したのはわずか30年ほど前なんですね。ですから「ニュースポーツ」としてのドラゴンボートに関する四方山話を簡単にさせていただきます。

まず、皆様のお手元にレジメを用意しましたが、起源についてです。龍舟競技、渡船、というような言い方をしていますけども、有史以前に中国華南の水郷地帯にあった古越族(こえつぞく)が始めたと言われております。この地方では舟は唯一の交通手段で、初夏になると彼らは船を漕いで近くの親類や友人を訪問したり、日常の生活に使ったわけですね。東南アジア、中国の南の方というのは農村地帯ですから、舟競漕は東南アジアでは秋の収穫期を前に洪水が早く終わることを祈願する行事でもありました。またドラゴンボートの起源というのは諸説ありますが、最も有力なのが紀元前278年に遡る「屈原説」です。中国の春秋戦国時代、秦の始皇帝によって滅ぼされた楚の国の政治家であり詩人でもあった屈原は、政策をめぐり国内の政治的な策略により国を追われます。湖南省に洞庭湖という大きな湖がありますが、そこへ流れ込む汨羅(べきら)という川の淵に石を抱いて抗議の入水自殺をしたわけです。これを知った近くの漁民たちは屈原が淵に潜む龍や魚に襲われないように竹筒に蒸した米を詰めて水中に投げ込んで、ドラや太鼓を叩いて洞庭湖を探し回ったということです。以来、屈原が入水した旧暦の5月5日の端午節にその霊を祀る小舟のレースが各地で行われるようになりました。これがドラゴンボート競技の始まりだと言われています。中国では現在も端午の節句の慣わしとして「ちまき」を食べたり、匂い袋を身につけたりするほか屈原を助けるために船を出した故事にちなみ、龍舟競争が盛大に行われます。日本でも5月5日は端午の節句であり、日本の「ちまき」の起源もこの伝説に由来すると言われています。屈原が亡くなったのが5月5日ですからこれが端午の節句。中国では今でもほとんど全土で旧暦の5月5日には大きな舟漕ぎ競争大会がいくつもいくつも催されます。

ところで、それでは我が国の舟競争はどうだったかということですが、文献の上では10世紀頃に始まったのではないかと言われております。中国では河川や水路で行われる農耕儀礼の行事であったのに対して、日本での競争は雨や水に関する雨乞いや龍神の信仰など、神事の一環として時代を超えて様々な形で行われてきました。今でも様々な形をとって各地で行われております。また、豊穣を祈る農耕儀礼や各地の生業の繁栄を願う儀式に加えて、海に囲まれた日本では大漁祈願や航海安全を祈願する漁業儀礼として海上で行われることが多く見られました。特に沖縄など鹿児島から以南の方ではサバニ漁(沖縄・糸満の海人たちが、かつて漁をするために使っていた舟「 サバニ」による漁)など、かなり神事に特化したような行事が昔から行われております。

2000年に海の博物館(三重県にある財団法人)の依頼で山口県・梅光女学院の安富教授が行った全国の舟競争の分布調査によると、南は兵庫県相生や長崎のペーロン大会、それに島根県の三保ケ関、天草、熊本、鹿児島、沖縄のハーレー大会など広い範囲で舟漕ぎ競争が実施されています。それらのほとんどが現在では7月から9月の夏祭り、ふるさと祭りなどの名称で開催されておりまして、かつての行事の復活というよりも新たな地域おこし、村おこしといった性格が強いようです。しかし、沖縄のほうでは昔ながらの神事という意味合いの強いレースが現在も行われているようです。ちなみにその安富教授の調査では現存している大会は日本全国で261件というふうになっています。これは凡その数字ですが、全体としては500件近い様々なレースが日本中で行われておりましたし、また現在も行われていると思います。

次に、これらの伝統あるお祭り行事であった舟漕ぎ競争が世界的にどのようにして伝播していったかということです。中国が起源といわれる龍舟競争は、華僑の人達がアジア中、世界中に移住していったことに伴ってマレー半島、シンガポール、スマトラというような地方にも伝わっていきました。一方、中国系のいわゆる龍の頭を持った龍舟の競技とは別に、カンボジア、ラオス、ベトナム、インドネシア、ミャンマーなど東南アジアには古くから水の神の使いとして崇められている蛇(ナーガ)を祭る舟競争があります。例えばカンボジアではナーガを祭った「水祭り舟競争」(アンコールワットの入口には蛇の欄干があります)があります。また、タイでは、タイの王族がスポンサーになって白鳥の頭をボートの先につけた「スワンボート大会」という大きな大会が毎年開催されます。このように現在でも様々な構造の舟で古式豊かに競技が行われています。

では、これらの伝統的な行事が舟競争からニュースポーツとしてどのように世界に発展していったかということについて触れてみます。今までお話しましたのは伝統的なお祭り行事でしたが、これが国際的なスポーツとして発展していくわけです。これらの伝統的な舟漕ぎ競争は1976年に香港で開催された「香港国際龍舟祭」をきっかけとして、「ドラゴンボート」と名称を統一して国際的なスポーツとしてスタートしました。競技ルール、ボート、パドルなどのスペックを世界統一基準にして、スポーツ競技化されたドラゴンボート競技は急速に世界中に広がっていきました。その後、「世界ドラゴンボート連盟」、それから大陸別に「アジアドラゴンボート連盟」、「ヨーロッパドラゴンボート連盟」、「アメリカドラゴンボート連盟」というように大陸ごとの連盟が組織され、「世界選手権大会」や大陸別の「選手権大会」などの大きな大会が催されるようになりました。現在世界ドラゴンボート連盟に加盟している国、地域はおよそ100ヶ国あります。わずか20数年の間にオリンピック競技を目指すまでに発展し、すでにアジアではアジア競技大会、アジアビーチゲームズ、それに東アジア大会、東南アジア大会など、「アジアオリンピック評議会(Olympic Council of Asia)」が主催する大会では正式種目となっています。IOC(国際オリンピック委員会)への加盟基準を満たすところまできていますので、IOCからの承認もそう遠くない将来だと期待しているところです。

日本においては1988年、ちょうど今から30年前になりますが、大阪で日本龍舟選手権大会が開催され、日本におけるドラゴンボート競技がスタートしました。そして1992年7月、「日本ドラゴンボート協会」が設立され、2002年7月には兵庫県相生市で「第5回アジアドラゴンボート選手権大会」を主催しました。アジアのそれぞれの国の代表チームが集う大きな大会です。現在は一般社団法人に認定され、当協会が主催、主管する大会だけでも日本ドラゴンボート選手権大会(7月・大阪)、世界遺産・平等院鳳凰堂に隣接した宇治源平ドラゴンボート大会(2018年は9月開催)、東京・お台場を舞台にした東京大会(5月)、大阪の浜寺公園に隣接した水路で開催される堺泉北ドラゴンボート大会(6月)等があります。加えて、関西空港(KIX)の第1滑走路と第2滑走路の間の水路で開催されるKIXインターナショナルドラゴンボート大会(2018年は9月)もあります。世界中の空港の中でドラゴンボート大会が開催出来るというのはここだけですから、海外のチームに人気のある大会となっています。また、滋賀県の大津の競艇場を借り切って開催している大会もあります(2018年は10月)。このように、当協会ではいずれも特色ある大会を主催、主管していて、ドラゴンボート競技人口も増加傾向にあります。ちなみに現在日本ドラゴンボート協会で把握しているドラゴンボート、或いはペーロン等の大会競技人口は2017年10月現在で41の大会、1372チーム、選手が約2万人となっています。先程も言いましたように日本全国で261、或いは300近いお祭り行事ですね、そういう大会がいっぱい催されていますが、そのような大会から熊本県や鹿児島県、島根県のように日本ドラゴンボート協会の関係するような大会に参加するチーム増えてきていることはとてもありがたいことです。

次に、スポーツの持つ重要性と言いますか、スポーツがどのように我々の生活に貢献しているかということについてお話します。

今年、韓国の平昌で行われた冬季のオリンピックではスピードスケートとか、フィギュアスケート、ジャンプ、ノルディックなど日本選手の活躍が注目されました。皆さんの記憶にも新しいことだと思います。また水泳、柔道、卓球など日本の若い選手の活躍がとても注目を集めています。アメリカの大リーグに移籍した大谷翔平選手の活躍は毎日、毎日テレビから目が離せません。昨日はちょっと勝ち越しがなかったようですが、すごいピッチングをしましたね。テニスの錦織選手もそうです。女子の大坂選手もすごいですね。日本選手の活躍は我々に勇気と元気を与えてくれます。キャノンの会長兼CEOの御手洗富士夫氏は、スポーツの重要性について三つあるとして次のように述べています。

引用しましたのでちょっと読ませていただきます。

1) まず、人間力の向上。スポーツは総合的な人間力の土台を作り上げるものです。スポーツを通じて培われた体力、戦力、チームワーク、フェアプレー精神などは企業の経営や先端研究、人材育成にも必要不可欠な要素です。21世紀のグローバルな経済社会は真剣勝負且つ荒波の連続です。そうした中でしたたかに生き残るにはスポーツを通じて培った力が生きてくるはずです。大学生が企業に就職するときにやはりスポーツ選手というのは人気があるようですね。

2) ダイバーシティ(diversity)、多様性と日本語では訳されています。ダイバーシティの促進です。ダイバーシティは近年、企業の経営でも重要性が増しています。スポーツは性別、年齢、国籍、人種にかかわらず、多様な人材で組織を構築しています。民族対立や社会的分断の動きが世界中でも顕著になる中、普遍的価値を象徴する存在だと思っています。

3) 経済の活性化にも貢献できるという点です。スポーツはあらゆる面で経済に大きな波及効果をもたらす一大産業です。野球やアメリカンフットボールなどは地域に根差したチームが多く、地域経済の活性化にも大きな役割を果たしています。現在のスポーツは社会的コミュニケーションの媒体として非常に高い大会価値を持っています。スポーツに高度なテクノロジーや膨大な資本が投下されるのはスポーツが持っている価値の高さと相関しているが、それはスポーツや現在の社会を貫く本質的な力を表す要素として構成されているからだと思います。

私も国際関係論を研究している中で、やはり御手洗氏が指摘されるこれらの三点は、経済の活性化にとって重要な要素だと思っています。ではドラゴンボートという競技がどのようにこのスポーツの重要性に関わってくるのか、ちょっと当てはめて考えてみました。

一つはドラゴンボートというのは個人競技ではなくて、1チームが22名(スモールボートの場合には12名)で構成する団体スポーツです。そのためにメンバー全員が心と力、そして技を揃えないと勝利に結びつきません。このことから体力、戦力、チームワークの重要さを学ぶことができる。これがドラゴンボート競技の重要なポイントの一つかなと思っています。

二つ目が、水上競技ですから安全に十分な配慮が必要であるために安全教育の絶好の材料となるのではないかと考えます。

三つ目は国際大会への出場、或いは海外から日本の大会に多くのチームがやってきます。このような機会を生かして世界の若者と日本の選手が交流を図る機会が多く、国際的な視野を学ぶことができるということが挙げられます。

このような視点からドラゴンボート競技が青少年教育の良き教育ツールであることは間違いなく、いずれも御手洗氏が列挙している人間力の向上とか、ダイバーシティの促進という重要性にすっぽり当てはまるんじゃないかと自画自賛しています。

さらにもう一つ付け加えるとすると世界選手権大会、或いはアジア選手権大会等の大きな国際大会では世界中から多くの選手、応援団が集まります。イタリアのラベナ(Ravenna)、オーストラリアのアデレード(Adelaide)で開催された大会では5000人を超える人数でした。このように多くの人が集まるので交通、ホテル、それから観光などへの経済効果も大いに期待できます。多くの国や地域が国、地方政府、それから民間企業と組んで世界大会などの誘致に争って名乗りを上げるというのもそういう経済効果が大きいからでしょう。経済の活性化を促す大きな要因でもあると言えます。2021年に関西で開催されるワールドマスターズゲームではドラゴンボート競技も正式種目の一つとなっております。滋賀県の大津の競艇場でドラゴンボート競技が行われることが決定しております。我々もドラゴンボートマスターズゲーム協会といろいろ打ち合わせを行っている最中でもあります。また今年の8月、インドネシアで開催されるアジア競技大会(Asian Games)ではトラディショナルボートレース(Traditional Boat Race)という名称での開催が決定していて、日本からもJOC を通してチームが参加することになっています。このようにドラゴンボート競技はニュースポーツとして世界中に普及してきました。多くの魅力と可能性を秘めたスポーツであると自負しております。

最後になりますが平等院鳳凰堂という世界遺産、或いは宇治茶という国際的なブランドを特産品に持つ宇治のこの街においても、ドラゴンボート競技を宇治市のもう一つのブランドとして、さらなる宇治市の活性化に活用して頂ければ有難いと思います。そのためには日本ドラゴンボート協会としても応援したいと思っています。本日はご清聴頂き、有難うございました。

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