健康寿命

2018.7.26

京都府立大学名誉教授

中坊幸弘

こんにちは中坊幸弘でございます。本日、林さんのご依頼を受けまして、ちょっと躊躇したんですけども皆さんのお役に立てればと思いましてこういうふうなテーマを選ばせていただきました。だいたい世の中、お金ができて、地位もあって、それなりに名誉がある。そうすると後、望むものといえば長生き、長寿です。それで、寝たきりではなくて、健康に長生きしたい、古今東西、歴史的に世界中見回しても最終的にはそのあたりは人として変わりがないようです。そこで本日は健康長寿というお話をさせていただきます。ちょうど1週間ほど前に2018年度の平均寿命の公式発表がございました。日本の平均寿命というのは世界で現在男性が3位、女性が2位ということです。最近の推移、平均寿命は女性が87歳、男性が80.7歳、健康寿命は1990年からずーと伸びてきています。京都府民について調べますと平均寿命は女性が87.35歳で、全国的には9位、男性は3位。平均寿命というのは厳密には今80歳の人が後7年間生きられるという数え方ではなくて、今年生まれた子が将来的にはどれぐらいまで寿命が行けるんだろうというのが平均寿命。ところが健康寿命を見ますと女性の場合京都府民、44位に下がります。それから男性も28位。だいたい平均寿命と健康寿命の間というのは10年から14年なんです。すなわち、14年から10数年間は何らかの介護とか支援を得ながら生きている。健康で、自立した形で生活できるのは平均寿命よりも10年から14年ぐらい短い。そのあたりをできるだけ健康寿命、支援とか、介護を必要とせずに平均寿命を全うするにはどうすればいいかというのが本日のテーマにさせていただきます。

日本人の寿命がこの数十年間で世界一になった。平均寿命としては現在、香港がトップでそれから日本は男性が3位で女性が2位。この数十年間で世界2位になったという因子を挙げてますとまず、戦後経済発展、それから一番大きなのはやはり戦争がなかった。これは戦争がありますと若い年代とそれから中高年が亡くなります。だからどうしても平均寿命が短くなってくるわけです。それから戦後の社会環境の整備。医療の進歩。それとよく言われるのが日本型の食生活というところです。すなわち、米飯ですね。米を主食としていることによって水分が多くて、低脂肪という主食。それからそれまでは植物性食品からが多かったんですが戦後、動物性食品の摂取量が増えまして、そのバランスが良くなった。それからたんぱく質源が魚、穀類、卵、豆に加えて戦後、経済発展に伴って肉とか乳製品の摂取量が増えてきたという。このような食のバランスが保っている。そのことによって、寿命が延長しているというふうに考えられます。最近の厚生労働省が発表しています支援。要支援1、要支援2、それから五つのレベルがある介護です。支援と介護を必要となる原因について脳血管疾患があります。いわゆる脳卒中、認知症、高齢による衰弱。骨折、転倒、関節疾患、それから心疾患です。で、その他です。そうしますとこういうふうな原因によって要支援とか要介護、いわゆる自立できできずに他人のお世話にならなければいけないと統計上はそうなっています。これらは全体の中で23%が高齢、運動器官の障害ですね。それで運動器官というのはロコモティブシンドローム。最近ハイカラな名前でそう呼ばれてますけども、骨折、或いは関節痛とか筋肉の減少によって運動系の不安定症。運動器官の不安定によってお世話になる。それから19%が脳血管疾患。16%が認知症です。そして高齢による衰弱。そこの部分については最近の言葉ではサルコペニャ、フレイルというのもお耳にされたこともあるかもしれません。いわゆる加齢に伴って運動量と食事量、それの低下によって骨格筋とか筋肉量の低下。それがサルコペニアです。フレイルというのは加齢に伴って予備能力が低下する。いわゆる衰弱している。脆弱性が増すということです。で、食欲の低下、摂取量の低下があると低栄養になって、それで体重の減少、それから筋力が低下して基礎代謝が減ってエネルギー摂取量が低下して疲れやすい。さらに動きにくいというふうなサイクル、これがフレイルサイクルと呼ばれるものです。だから今日皆さんはお昼からとんかつを召し上がって、間食される方はまだまだ元気かなと思いますが暑いと摂取量が減ったり運動量が減ってくるとやはり人間というのは衰弱してきます。そのあたりをどういうふうに過ごしていくか。それで食物を摂取しては私達、酸素を吸って炭酸ガスと水に変えるときにATP を体で作ります。

私たち人間はエネルギー源は電気でもないし、ガソリンでもなく、腹が減ったからといってコンセントに指を突っ込んで充電したってだめなんです。やはり食べなければ、或いは呼吸しなければエネルギーは作れない。私たちのエネルギー源というのは ATP です。それで ATP というとみなさん昔、聞かれたかと思います。いわゆるホタルのお尻のあの青白く光る。光を当てると、紫外線を当てると光る。あそこに ATP は実際には我々見える形では存在を意識できるわけです。この ATP がエネルギーを供給する。それを使って体をつくる。それから体の働きを調整する。それらはすべて食物によってできる。そうすると何をどれだけ食べるのかというと食物でしか栄養素がないわけです。その栄養素はエネルギー源、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル。ここで皆さんにお聞きしたいのは必要な栄養素全部含む食物というのはあるでしょうか。今日の昼食で野菜からデザート、ご飯、麺類、いろいろ種類を出していただきました。だけど私たちが必要なもの全部を含む食物、一品で。どうですか。例えばモンシロチョウはキャベツだけで、お蚕さんは桑の葉だけでという生活ができるわけですけども、人が必要とするものを全部含んでいて、一品だけで事足りるという食物がございますでしょうか。まあ、カロリーメイトとか、あのような合成のものはみんな混ぜてあるわけです。そうでなくて、皆さん.みんな一度はお世話になっているわけです。母乳。正解です。で、このとき牛乳というとだめなんです。母乳、人のミルクでないとだめです。それでここにはすべての栄養素が含まれています。母乳だけです。だけど林さん、母乳だけでいいのに今、面倒くさいですね、いろんなものを食べんといかん。なんでやめたの。一品で済むんだったらそれずっとやっときゃいいのに。まあ、大体はお母さんが乳離れさせようと思って苦労されるわけです。液体食です。この液体食を固形食にするのが離乳なんです。水分を少なくして胃の容量がありますから、だから固形を主体とした食事形態に変えるのが離乳です。そうするとそれではミルクの水分を飛ばしてしまえばいいと考えたのがチーズ、ヨーグルトで、いろんな栄養素を取っている民族も沢山いるわけです。だけど、牛乳を母乳の代わりに与えてみますと牛乳の場合には甘い、甘すぎる、糖質が多いんです。それからミネラルか多いんです。ところが人間に必要なビタミン C とかいろんなビタミン類は人と動物で違いますからビタミン C は犬でも猫でも動物はビタミン C はビタミンではないんです。アスコルビン酸はビタミンではありません。だから人間、サル、モルモット以外にアスコルビン酸を必要とする動物はいません。彼らはみんなグルコースから合成することができるわけです。そういうことで間違った知識で子育てをされた場合にはその母乳が出ないから乳児に牛乳を与えすぎると腎臓障害が起こってきます。ミネラル量が多い。それから糖質量も牛乳の方が多いので肥満が起こりやすい。そういうことの食物と食べ方について少し考えていただきます。

今日お昼をいただきました食事の役割、それでレベルとしては3段階あります。いわゆる生きるための食事というのは、これは私たち生まれつき空腹感と満腹感、これでコントロールされているわけです。これは本能です。生まれたと同時に脳でいわゆる空腹、腹減った、或いは腹が満たされた。そういうことを意識して最低限生きるための食事というのは生まれつき備わった形でこの世に生まれて来ています。だから赤ちゃんもお腹がすいたら泣いて、それで満腹になったら泣き止んでということをずーと続けていくわけです。これが最低、いわゆる基礎の生きるための食事です。

これはほっといても空腹感と満腹感、これがなくなったらもう生きられないということです。第2段階のレベル2は楽しむための食事です。いわゆる食欲。これは生活経験の中で生まれてから生活体験をする中で養われるものが食欲と嗜好です。だから今日はいいことがあったから、或いは誕生日だから一緒に食事をしよう、家族がそろったからどこそこへ行こう。このような食事、楽しむための食事。それでどういうものを食べたいかというのはその人がいい経験をしたり、思い出があった。そういうものを食べたい。今暑いからこういうものを食べたい。嗜好というのは同じビールでもどこそこのビール、あそこの酒でないと、或いはあの焼酎でないといかんというこだわりですね。これが嗜好です。これは生きるための食事を基礎にして.楽しむための食事です。

それでレベル3というのは健康長寿のための食事、いわゆる、病気を防ぎ、治すための、これはそれぞれに生まれつき備わっているのではないんです。学習と知識です。まさに今皆さんに一つでも持って帰っていただければと思う知識、ここでレベル3の健康長寿のための食事という食べ方。だからこの食事の役割というのは生きるため、楽しむため、それから健康長寿のための食事というのを私たちは日々しているわけです。

それで望ましい食べ方。バランスを考えるということですけれど、どういう食べ方をすればいいか。一つは主となる主食です。これは穀類でも、麺類でも、米飯でも、なんでもいいんです。主食となるもの。それからおかず、主となるおかず。それから副となるおかず。だから酢の物でも、あえものでも.何でも。それから汁もの。それで汁物も血圧、塩分といいますけども具を沢山入れることによって、その汁の部分が少なくなるということもありますから年齢を重ねますと唾液の分泌も悪くなりますので食事ごとに汁物があったほうがよろしいということで主食、主菜、副菜、汁物、それから牛乳とか乳製品、それから果物。それで一日15食品以上を目標にする。以前は25とか言ってましたが家庭で年寄りだけだと1回作ったら一度に食べられないから2、3日食べるということもありますから一日15食品以上を目標にする。食事を偏らないということが大切かなと思います。

忙しくて面倒くさい時にはサプリメントとか健康食品だけでいいんとちゃうかということもありますけども、健康食品とかサプリメントというのはお腹の足しにはなりません。空腹感を満たすものではないんですね。いわゆるエネルギー源と言いますけども、あくまでも機能性の食品とか栄養の補助、それは過不足のない食事の上に積み上げられるものです。だから、少なくともベースになるものがあって、そこに健康食品とか、サプリメントがその機能を発揮する。

ところがこれ以上摂取すると体に良くない量というのがあります。容器などに表示義務があります。例えば骨を強くすると言うのでカルシウム。牛乳で摂っていればとりすぎるということはないんですがそのカルシウムを錠剤にしてしまうと、まあ明日の分も摂っておこうかということでふたつぶ、みつぶ、一日分をパッと摂ってしまう。そうすると過剰になります。だからその容器に表示義務がありますから書いてあるのでそれは守る必要があります。過剰症の恐れとか障害の危険性です。特に妊産婦とか、そういうふうな過剰症の危険性があるもの、ビタミンA とか E とか、或いはカルシウムの場合でも摂りすぎると結石ができたり、結石ですね。それから便秘になったりすることがありますのでそのあたりは注意しておく必要があります。

それであと、何を目標にと言うとやはり体重です。体重の場合には痩せすぎの人も太りすぎもよくない。痩せすぎの人も太りすぎの人も死亡率が上がるんです。女性の場合もそうです。だから標準体重を維持する。だいたい人間の体重というのは山形か谷型になります。多すぎても少なすぎても良くない。血中のコレステロールの値もそうです。だいたい220から230、240ぐらいまでですけども、低くても190とか180、血中のコレステロールが低いからうれしい。これは危険です。いわゆる血管がもろくなって、それでそこに血圧が高いのが重なりますと脳卒中を起こしたりします。だからやせ過ぎも太りすぎも良くない。皆さんお金でもそうです。沢山持ってたら心配ですね。いつ襲われるかわからない。少なくとも心配ですね。買いたいものがあるけどもなかなか買えない。まあ、ほどほどに。ほどほどにというのがどうも人の世界ではあるようです。

それで最後に栄養摂取と同時に運動ですね、体を動かす。それで一時、1万歩。だいたい1万歩という説が出ていましたが最近はまあ、8000歩ぐらいまで。青柳という先生が5000人だったかを調べてグラフを作られました。それでメタボリックシンドロームを予防する。いわゆる体重を減らすためには1万歩ぐらい必要でしょう。それで歩くといっても普通に会話できる程度の速さですね。ゆったりゆったり、或いは急ぎ足でなくってという普通に会話しながらウオークという運動量です。1万歩でメタボリックシンドロームを予防できます。8000歩で高血圧とか糖尿病とかを予防できます。7000歩だと骨粗しょう症とかがん。それから5000歩ぐらいだと認知症とか、心疾患、脳卒中を予防できます。4000歩は寝たきり、鬱病を予防。まあとにかく体を動かしましょうということです。それでその時に膝とか手、足が動かしにくい場合には立っているだけで大丈夫なんです。だから座ってるとか寝てるといわゆる廃用性萎縮という体に重力がかからない。だからベットの横でもいいですから自分で立つということ。これによって骨に刺激を与えます。それからできることなら家の中、さらには家の周り、日に当たるということです。それを一日に何回かやることによって寝たきりを防ぐことができます。とにかく私たちの体は自立して、それでそのための栄養素を摂取することによって寝たきり、認知症、そういうものを防いで元気に平均寿命まで長生きしていただきたいと思います。以上で今日のお話を終わります。

質疑応答

切地

1)家内の作った食事はおいしいです。が、最近、年をとったせいか空腹になる前に食事を与えられることがあります。

若いころと比べ、空腹感のない時の食事はつらいな。肉食獣であっても空腹でないときは食べないと聞きます。

人の場合、一日きっちり三食の習慣を守っているところがある。

回答

おなかが空いてないのに食べんといかんのかという。腹が減ってないというのが問題です。一日三食でなくても二食でもよろしい。ただ、食べる時刻は決めたほうがよろしい。減ってなくても少量でもいいから腹に入れるというのが大切。時刻合わせをすることによって体のほうが準備をしますので、思わぬ時に食物が入ってくると一生懸命、大変なことが起こります、体全体が。だから、決めた時刻にお腹が空いてなければまったく食べないのではなくて、少量は入れてやる。いわゆる、予知反応といいますけども、体はそういうことで動いています。

2)私は、主食はご飯ですが液体が主食になったりして必ずや、ご飯を食べることがなくなった。これは体に悪いか

回答

主食は何でもよろしい。ところが液体の時にアルコールがどれだけ影響するか、アルコールというのはエネルギーで5Kカロリーぐらいです。ほとんど私たちの活動に使えるエネルギーというのは少ないですから。(足しにはなりません)





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