「教育改革と今の課題について」

2018、8、30

宇治鳳凰ロータリー 卓話                   

 馬場 勲

ご紹介をいただきました馬場勲です。私は莬道高校に勤めていましたので故郷に帰ったような懐かしい気持ちです。また私は草津ロータリーの会員で世話になっております。今日こちらに寄せていただきましたのは、当クラブの林様から卓話に来てくれないかと話があり、私でよければとお受けさせていただきました。充分なお話ができるかどうか心配ですが、限られた時間の中でお話をさせていただきたいと思っております。

卓話の時間が限られていますので、資料として、レジメと「統計及び子供を取りまく環境」について準備をいたしました。レジメにそって話を進めさせていただきます。

レジメの[1]「はじめに」

ここでは人口減少と子供たちを取り巻く環境問題について触れたいと思います。2017年に生まれた子どもの出生数は、前年度より3万人少ない、94万6000人でした。戦後の第一次ベビーブームは、1947年から1949年の間で毎年出生数は250万人以上、第二次ベビーブームは1971年から1974年の間で、年間200万人を超えていましたが、2014年から2018年の間では、94万人と減少しました。国の国力の一つには総人口数と15歳から64歳生産年齢人口の比率も関係します。したがって将来の国力を考えると、出生数の減少は人口減に直結した大きな問題であり、その対策は今後の国の大切な政策の一つとして取り組まれなくてはならないと思います。また、高齢化が進む中でその年齢層の社会への係わりも方も大切です。模式図で示しました「現代の子どもを取り巻く環境」については、社会の変化が激しく子どもたちが翻弄されている状況があります。

レジメの[2]「日本と西欧諸国の教育改革」についてです。

今日の話の内容は皆さんご承知の通り教育というのは「国家100年の計」と申します。江戸末期から明治維新への移行はいろんな問題がありましたけれども世界各国の列強が介入する余地のない形で江戸から明治に移りました。これはやはり江戸時代の藩校や寺小屋が教育普及に果たした役割は非常に大きかったと思います。1840年には中国の上海でイギリスがアヘン戦争を起こしました。上海をイギリスの艦隊が攻撃して侵略しました。それまでにイギリスはシンガポール、あるいはもっとヨーロッパに近いスリランカのコロンボ、インドの西海岸にありますボンベイ(ムンバイ)など、拠点をどんどん武力で侵略して植民地支配をしていったわけです、江戸末期に日本も開国を迫られていたわけです。イギリスとの薩英戦争で英国艦隊から攻撃され、列強の進んだ軍事力に圧倒された。あるいは長州藩は下関戦争で列強4ヶ国から攻められ開国派へと変わっていきます。英仏などの列強は、当時の日本の国力が東南アジア、或いは南アジアとは違う簡単に武力では侵略できないと感じていた。しかも、当時はロシアが長州藩にお金を貸すから遠慮せずに申し出てくれと言ってきていた。すなわちいろんな国が江戸末期にひたひたと近寄ってきたわけです。そういう中で持ちこたえられたというのはやはり江戸時代の教育のおかげだと思います。

当時、明治になりましてから、明治16年に文部省が寺小屋についての調査をしました。どれぐらい寺小屋があったか。なかなか数がわからなかったが江戸時代末期に寺小屋の数がだいたい1万1500~2万箇所あったという調査があるが、種々の調査があり時期によって数も異なっている。一つの寺小屋では50人前後の子供たちがそこで勉強していたわけです。庶民は寺小屋で読み、書き、算数ですね。それから各諸藩では藩校を作って本当に各藩がどう生き抜いていくかということでしっかりした教育をしていたわけです。そういう教育が江戸のベースのところで大きな力を持っていた。例えばペリーがやってきたときに江戸幕府は、開港について1年後に再来日した時に交渉することを約束した。

その時、江戸幕府は各藩300程の藩に、ペリーの開港要求の内容を知らせて意見を求めた。ペリーは日本に開港せよ。貿易せよと迫っている。どうしたらいいかと、各藩に聞いているのですが、各藩から提出してきた内容の大半は外国船を打ち払へ、攘夷や尊皇攘夷だと主張。ところが飛び抜けた良い案を出したのが勝海舟でした。岩倉具視西欧視察団が、西欧へ渡航しましたが、最初アメリカに渡りました。その時に勝海舟は咸臨丸の艦長としてサンフランシスコまで随伴し折り返し日本へ帰ってきたのです。世界を見て世界に門戸を開かないとだめだ。そんな中で勝海舟は開国派に動いていくわけです。勝海舟は貧しい家庭でおじいさんが武士の位を買うわけです。おじいさんは目が不自由でその中でコツコツと仕事してお金を貯めて、そのお金で武士の位を買うわけです。勝海舟のお父さんはその貧しい下級武士で、わずか41石の石高を与えられていた。本当に武士の位を持つだけ、そういうような貧しい生活をしている。勝海舟はそれを見て成長したわけです。自分は勉強しなければだめだと強く思ってオランダ語を猛烈に勉強するわけです。お金がないので辞書を一冊借りてそれを写して二冊作成して、そして、その一冊を借りた金10両の返済に充て、もう1冊を自分のものにした。貧しい生活をしながらオランダ語の勉強をします。そして幕府の中でもすぐれた蘭学者となり、地勢的に海に囲まれた日本を守るため航海術、海洋学、兵学その他、あらゆることを勉強しているわけです。これはやはり教育というか、いろんなところで教育が生きてきている。江戸時代の教育、それが明治に受け継がれて明治5年に学制が施行された。主として寺小屋は小中学校へ、藩校は高等学校へと発展していくことになったのです。日本の教育改革の一番大きい変化は江戸から明治への転換期、それから太平洋戦争が終わってからの新学校制度6・3・3制度のスタートからです。太平洋戦争の名称は、戦争の内容から言って本当は大東亜戦争というのが正しいのですが、連合国軍最高司令官総司令部 GHQ が大東亜戦争の表記を全部黒抜きでつぶしたんです。アメリカと日本のみの戦争だとしたかったのです。すなわち、東南アジア諸国は日本が進出することによって欧米から独立していきますから、そういうところのことは少し抑えたいと考えたと察しできます。だから大東亜戦争というのは正しい表現ですが今は太平洋戦争という名称になっております。マッカーサーが組織したGHQにより新しい6・3・3制が開かれたわけです。日本の教育は、憲法、教育基本法、それに基づいて作成された学習指導要領にそって教育が実施されています。社会の変化に対応して学習指導要領は約10年ごとに改訂をされ、2020年から新学習指導要領改訂が実施されます。それは時代の流れとともに時代のニーズに応じて、教育内容が変わってくる。不易な面と変化していく面をしっかり把握して教育をする必要があります。例えば小学校であれば英語教育を入れる。今は5年生から教科書なしでやっていますが、それを3・4年生では英語に親しむ内容で、楽しみながら英語を勉強する。さらに5・6年生では教科書に基づいて英語を勉強することが2020年からスタートする。2020年は小学校1年から6年まで、中学1年から3年まで一気にその年度で変えてしまいます。高校は2021年から学年を追って変えていきます。日本史だったら古代史からやってきて、近現代史の学習の頃になると授業時間不足で最後までやれない結果となります。近現代史を学ばないまま終わってしまうことになります。今の時代は近現代史で日本や世界の歴史を学ぶことが大切です。新しく「歴史総合」という教科が導入されます。

レジメの[3]「子どもを取りまく環境と親のしつけ」について。

いま一番大きな問題は現在の子供を取りまく環境の変化です。これは学校教育と子供たちを取りまく環境というのが、並行しながら矛盾を抱えながら進んでいくわけです。そのことに関する資料に示されている通りです。核家族化に伴う問題、育児の問題、子供さんを生みたいけどもなかなか預かってくれるところがないという大きな課題。世界の子供たちに共通する長時間のスマホ。光泉中高校はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに姉妹校を持って交流しています。向こうの学校でもスマホ対策に頭を痛めています。これは家庭でどうみているか、家庭によっては約束してコントロールできているところもある。ほとんど無理ですね。実際なかなかできていない。親のそこまでの力というか、子供とよくお話し合って使用時間などを制限したらいいのだけれどなかなかそうは出来ていない。スマホの中に潜んでいるものは子どもたちの成長にとってはもうどうにもならないほど悪いものが入っている。スマホの問題は子供たちの読書量も落ちていくし、スマホ使用時間は生徒によっては5時間も6時間も見ているようです。これはもう全国的な問題です。そういうような子供たちがじっくり本を読むということがなかなか出来ない。個人差はありますが。私は世界地理を教えてきた関係で多くの国を見てきました。アメリカ大陸の横断、第一次世界大戦の発火点になったユーゴスラビア、バルカン半島の諸国を視察しました。またイギリス全土を回り地理や世界史に出てくるようなところを見て回りました。そういう中で日本は物があふれているということです。この消費文化の中でそりゃ消費も産業の活性化に必要ですが子供たちにとって、そこはなかなか難しい問題があります。物多くて心貧しいのでは困ります。これは日本の家庭でも学校でも大事な問題です。あるいは退廃的な文化、インスタントの食生活、便利良くなったけれども.それでいいのかなと言う問題がいっぱいあります。すなわち、子供たちを取り巻く環境は、大人が作ってきたのです。家庭だけで対応していくというのは非常に難しい問題です。だから教育での現場で果たせることをきっちりやろうということ。例えば私が今勤めています学校ではいろんなことを具体的に、例えば時間管理を自分でする。学校の始業ベルは鳴らさない。これは近畿圏にある高校では少ないと思います。始業ベルが鳴ってもまだ廊下でまだ遊んでいる生徒はいません。すなわち教員が教室に行った時には生徒は座って授業の準備をしています。管理的というよりもだんだんそうなってきて、それが今スムースに行っている。学校に来られた方々が静かですねと言われます。学校は家庭と同じで、来客が来られたら「今日は」と挨拶する普通のことです。いろんな関係の方がお見えになりますが子供たちの挨拶がいいですねと言っていただいています。そういう場面でしつけというか、足元のしつけから普通に繰り返し行っています。すなわち、社会全体に頼ってもそれは無理なんですから、ご家庭で、あるいは自分たちのいる学校でそういうしつけをしていく。それが習慣となってきます。それをきっちり学校で見て、そしてここは良い、ここは悪いということが毅然と親と話し合いをして進めていくわけです。そういう意味で私たちは子供を育成するのにできるところと、それからこれは社会全体でやっていかねばならない問題とか、そういうことをできるだけ整理をして取り組んでいます。しつけは学校と家庭とで補完関係にあり、それぞれの立場を認め合って子どもを育てていくことが大切です。

17年前は光泉高等学校の生徒は700人程度でしたけれど.今はおかげさまで1100人ほど、400人ほど増えました。滋賀県全体で毎年卒業生徒数は中学3年生が1万7000~8000人でした。今ずっと減少して1万4000人前後となっています。これから10年間はその数で推移します。そうすると私学の場合ですといかに生徒を確保して学校経営をするかということ、これもまた大事なことです。子供たちが減ってくる中で本校は逆に受験数が非常に増えてきました。今、近畿で、大阪では私学が100校、京都では40校、滋賀県では10校あります。この3府県で私立高校が150校あるのですが受験数の多さでは本校が5番以内に入っています。これは本当に学校経営上ありがたいことです。本校では一人一人の生徒をよく面倒をみます。一日の生活状況とか、家庭との連絡とか、本当に細かく面倒をみます。そして親との信頼関係をしっかり持つ。それから教員もどんどん成長させていかなければなりませんので研修会を充実して実施しています。本校の教職員は20歳代、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代の幅で教員の占める比率をみると、各層とも約16%程度でほぼ均等です。年齢的にバランスのとれた状態です。年配層の高い経験者が若いものに教えたりするというようなことも含んで、要は学校としてできることをきっちりとやっていく中で信頼に応える。従って私が行きました頃は例えば京都山科の東西線地下鉄歩行通路に学校宣伝のための照明付き看板、あるいは学校周辺とか、多くの箇所に看板を立てました。しかし今は生徒募集看板を全部撤去しました。学校の生徒募集は看板では無理で、やはり保護者の信託に応える教育実践しかありません。要するに生徒一人の人間として善悪の判断が出来ること、また希望進路の実現に向けた学力をつけることが大切です。これは次の世代、すなわち次へ伸びていくための学力をつけないことにはどうにもならないわけです。卒業後の希望進路の実現に生徒も教員も努力することしかありません。スポーツをやっている子供たちにはクラブ単位で勉強させる。文武両道に成果が出ているのではないかと思います。

さて今申しましたように子供の数が減ってきている。今年成人式を迎えた20歳の青年が約120万人。しかし生まれた子が約94万人ですからその差が減っていくわけです。今後一年間の出生数が80万人台になるんじゃないかという心配があります。そういうように子供の少子化の中で社会をどう作っていくかということは、これはもう個人の問題ではなく国あげての問題ですから国としても取り組んで欲しいと思っているわけです。私たちは学校に来て学んでいる生徒に対してしっかりとした教育を実践していくことが信託そして信頼にこたえるということになります。

[4]「教育改革と公的資金」について、

イギリスではサッチャー首相の時から教育改革に力を入れてきましたが、その後、ブレア首相になって、イギリスのこれから大切なことは、「一に教育、二に教育、三に教育」。イギリスを良くするには教育しかないと言うことを掲げ徹底的に教育改革をしました。

ヨーロッパ各国での大学・大学院を含くむ高等教育機関への公的資金支出額について、日本とOECD諸国を比較すると日本が最下位になっています。IPS研究でノーベル賞を受賞された山中伸弥教授は、研究費の募集のために京都マラソンに出場して募金活動をされていました。研究員300人余のスタッフの給料が不足して一年単位の雇用で研究員の身分が不安定なことを訴えておられた。このように世界的な研究に対して国の支援が不十分であると世界から遅れをとっていくことになる。日本の大学の地位はどんどん落ちてくるということです。今や京大、東大ともどういう基準で選ぶかということも問題ですが、シンガポール大学の地位が上位になっている。だから日本がこれから工業国として、そして素晴らしい文化国家として行くのにはやはり大学教育の中に研究費その他資金投入が大切であります。昨年、私は光泉高校の生徒を引率してイギリスのカンタベリー市にある学校に語学研修にいきました。そこへイタリア・スペイン・ポルトガル・ギリシャ、ロシア・中国などから来た生徒と一緒になって研修するわけです。イギリス以外の国々では母国語に英語を学ばないとこれからやっていけない状況があるのです。

ベルギーなんかの場合、周りは数カ国に囲まれています。フランス、オランダ、ドイツなどです。海を渡ればすぐそこにイギリスがある中で、ベルギーのような小さな国は必ず高等学校では2ヶ国語は必修になっているわけです。そうしないと仕事にありつけない。それぐらい英語の習得に熱心なんです。イギリスに夏休みに勉強に行く生徒が沢山おります。昨年中国の学生とも一緒でしたがが英語力はすごかったです。びっくりしました。中国はものすごい貧富の差があります。中国では小学校一年生からもう英語を学んでいます。私の友人が西安の大学で日本語を教えていますが、中国では論語は教えていないと言っていました。論語が日本の思想の考え方に影響を及ぼしていますが、中国では論語はやっていない。オーストラリアでは大学へ入学時の平均年齢は27歳ぐらいです。高校を卒業して一旦働いて自分でお金を貯めて大学に行くからです。日本は高校卒業すればすぐ大学へ行かないと悪いみたいな雰囲気になっています。社会全体がそうですから、なんか浪人すると親に悪いことをしたような雰囲気になっています。外国では働いて自分が金を稼いで大学へ行くことが普通になっているのです。日本の大学進学率は先進諸国の中では低い方です。短大を含んで52~55%位です。

さて、今日の話の内容は、それぞれ相当時間をかけて話せる内容ですが。浅く広範囲に及びました。問題提起ということで受け止めてください。日本は要するにこれからさらに教育を充実させていく必要があるということですね。それからやはりあかん事はあかんと言える社会。今日とんでもない事件が次々に起っています。昨日だったか、マンションの上から自転車が降ってきたというような、考えられないような事件が日本に多発している。これは日本の社会の劣化だと思います。そういう意味で私たち大人は、日本人の持つ良い気質、勤勉・正直・親切・高い知識欲・旺盛な好奇心などを誇りに思い守り育てていく教育が大切です。教育に携わっている者はしっかりと、子供たちに教えていく必要があるだろうと思う。

[5]「京都府立高等学校の入学選抜と通学圏」について

現在の京都府の公立高校の通学圏についてですが、この宇治市地域は山城通学圏に入り、普通科の高等学校に行く生徒は南山城通学圏の中の学校から選んで行けます。ただし、その他に専門学科というのがあります。例えば桃山高等学校の「自然科学科」というのがあります。募集定員は80名。ここへはこの南山城からも行けるわけです。京都府下全域から行けるわけです。或いは堀川高校の「探求学科群」へは160名。これも日本海側から木津の方までどこからでも行けるわけです。すなわちその他の専門学科というところへは宇治の地域を含んで南山城地域在住の生徒は選んで受験することができます。但し、高等学校の普通科を選ぶ場合は今の南山城県内のみの中からで選ぶということになっています。学費については、現在11万8800円というのが公立高校の授業料金学費ですが全額無償となっています。これはオーストラリアもニュージーランドも全部公立高等学校は無料ですからそれに近づいたということになります。

[6]「おわりに」

日本の21世紀を背負っていく子供たちが「知・徳・体」を身につけてすばらしい若者に成長してくれることを願っています。大人はそれぞれが関われる分野で子ども達の健やかな成長のために努力をしていかねばならない責任があると思います。国際ロータリーという組織に属している私達ロータリーのメンバーもすばらしい子どもたちの育成に尽力できると思います。本日は卓話の機会を与えていただきまして誠にありがとうございました。丁度予定の時間が来ましたのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

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