高齢者の病気

2018、12.6

高橋権也会員

高齢者の病気についてお話します。この会場には高齢者でない方もいますがそのうちに高齢者になりますのでよく聞いておいてください。まず老化についてです。老化というと白髪、皮膚のしわ、シミ、その辺で私達は老化をだんだん感じるようになってきます。男性は30歳代からゆっくりと老化します。それに対して女性は女性ホルモン(エストロジエン)の影響で閉経期の50歳ぐらいまでは若々しいが50歳をすぎると急に老化が進みます。特に女性は老化をはっきりと感ずる人が多い。例えばシミ。「シミができたんですけど…」これは「年齢がいったためで誰でもありますよ。私もありますよ」と私の手のシミを見せると「ああ、そうですか」ということで安心する。だけども男女差の他に時代差があります。例えば昔は老化が早く、今は70、80で若々しい人が沢山います。全然、年を感じさせない人が多い。

身体的な変化を見ますと老眼、白内障による視覚障害。これは非常に多いです。耳鼻科では難聴、歯科では歯周病や咀嚼力の減退などいろいろあります。味覚もだんだん退化する。甘味、辛味をあまり感じない。骨は骨粗鬆症による骨折が多い。関節は変形が起こって痛みが増えてくる。

免疫力が低下して感染症にかかりやすい。性格も変化しまして、知的能力、判断力が低下する。自分で感情を抑えることができない。ガンコ、自己中心的、孤独、疑い深い。このようなことが高じてくると認知症に移行してくるということになります。

フレイルという言葉があります。これは健康な状態から年齢とともに要介護の状態、その間、健康と要介護の間を虚弱(フレイル)という言葉を使っています。健康な人がこのフレイルになることをまず予防しなくてはいけない。フレイルというのはいろんなことに通じます。ます医療費が高くつく。転倒、骨折が多くなる。薬を沢山飲むようになる。病気が10個ほどついて、薬が10個以上という人は結構多い。施設に入所したり入院したりすることになります。それから認知症になる。要介護状態になる。最終的には死亡。だから我々元気なうちはこのフレイル予防、これが非常に大切です。

フレイルの評価の方法と言いますと体重の減少、6ヶ月で2、3キロ以上やせる。それから筋力の減退、握力が男性で26kg 、女性で18kg 以下、これぐらいが大体の目安になります。疲労感、ここ1~2週間いつも疲れるというような疲労感がある。今までと同じような仕事をしていても特に肉体労働の場合は何かこの頃疲れやすいなというような自覚を持つ人がいます。今までこのぐらいの仕事をしてもどうもなかったのにあちこち痛い筋肉痛。歩行速度、1秒間に1m 以下、1分間に60m 以下の歩行で。それから小股なる、すり足になる。予防法は大股に歩いて腸腰筋を使うことです。軽い運動やスポーツをしなくなる。この辺がフレイルの評価の対象になります。この項目全部に対してチェック項目がなければまあ、健康である。3項目以上あればフレイルと判断して考えてください。身体活動、これもいろいろと問題があります。

どういう活動がフレイル予防に繋がるか。まず身体活動、文化活動、ボランティア等の地域活動の3つがあります。これら3つの活動ができていればフレイルのリスクは最小。3つとも出来ていなければリスクが最大です。この3つの活動の内、身体活動がフレイル予防に最適です。身体活動ができていなくても文化活動、ボランティア活動ができていればフレイル予防に効果的です。ですから身体活動+文化活動、ボランティア活動をしている人が精神的にも肉体的にも健康でいられるということです。この3項目を同時に満足さしてくれるような生活を心がけましょう。

栄養はバランスの取れた食事、歯科口腔の定期的な管理が大切です。これはやはり歯が悪いと咀嚼、栄養摂取の面で大きなハンディが出る。

どういう病気で要介護になるかと言いますと、ヘルパーさんとか、医療とか、他人の支援を沢山要するひとたちは脳血管障害の人が多い。それに認知症が加わると要介護になってきます。全体としてみると要支援の人は整形外科的な病気、脳血管障害と認知症等が重なった人は要介護に移行する人が多い。身体機能の低下と認知症機能の低下、この辺で要介護になっていく人が多い。

目の病気について。失明の原因の横綱は緑内障です。眼圧が増加する。しかし眼科の先生の話では眼底の変化、視野狭窄があるかどうかできまる正常圧緑内障が多いので、最終的には視野を見ないと判断できないが、視野狭窄は自分ではなかなか気が付きません。検査で視野を調べてみると欠けていることが一目瞭然でわかります。普通は眼圧が上がるので眼圧を下げるような目薬を定期的につける。飲み薬もあります。いよいよとなると手術が必要な場合もあります。目の中の液体がいつも循環していますがその循環が悪くなります。それから非常に多くて深刻なのが糖尿病性網膜症、これは糖尿病がある程度進行した場合に出てくる網膜症、これで失明する人が非常に多い。今、失明する人の多くは目の疾患というより糖尿病から来る。網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、これらは高齢とともに増加します。白内障も非常に多くなる目の病気です。白内障は水晶体が濁る、すりガラス状になるということで光が十分に入らないために見えづらくなってきます。この治療は手術以外にない。最近は人工レンズが非常に簡単になりました。昔は眼球を大きく切開して硬いレンズを挿入していましたので大変でした。今は折り畳み式に入れることができますので非常に簡単で15分ぐらいの手術で済むようになりました。

それから多いのが転倒事故、これは原因としては視力障害、視野狭窄、前がしっかり見えていない。平衡感覚の低下でふらつきの人、特に女性が多い。その原因はいろいろあります。筋力の低下、すり足、

厚さ5ミリ 程度の敷物に足を引っかけて転んでしまう。足をしっかりと挙げないのが転倒事故の原因になります。

骨折で多いのは転んだ場合の大腿骨頚部骨折です。これが非常に多い。昔は高齢でこれを起こすともうほとんど寝たきり。そのまま亡くなる方が非常に多かったです。今は手術がうまくなりまして、それから人工関節も性能が良くなって非常に治癒率が高い。少々のことは手術で修正できる。それから転んで手をつきますので前腕骨折、それから背骨の骨折、これは圧迫骨折ですが尻餅をついたときによくやります。非常に痛くて起き上がることができない。上腕骨は転んで肩を打つことが多いんですけれど骨折する。この辺が高齢者の骨折の特徴です。

それから頭を打った場合の慢性硬膜下血腫、その時は大したことないと見過ごしてしまうことが多いです。転倒を見過ごさないようにするということが大切で、1ヶ月ぐらいは注意する。この病気は2、3週間後ぐらいで症状が出てくる。麻痺が起こったり、言葉がちゃんとしゃべれなかったり、極端な例では体が十分動くのに認知症の症状が強く出る。うちの患者さんで家族が連れて来て「うちのおじいちゃん、扇風機に向いてお辞儀をして話しかける。痴呆症になったに違いない」と。脳を断層写真で調べると頭蓋内に出血がある。それは脳の中で出血したのではなくて脳の外、頭蓋骨と脳との隙間に出血する。高齢者は脳が萎縮して隙間がたくさんある。だから少々出血してもすぐには症状が出ない。相当大きくなって発見される、ということなんです。それは手術で簡単に治る。たまった血液を吸い出せばいいので手術が終わった時にはもう元通り、劇的に良くなります。硬膜下血腫が発見された場合、どこかで転びませんでしたか、頭を打ちませんでしたかと言っても本人は何も覚えていないし、家族も気がついていない。そういえば自転車で転んだのか、自転車が壊れていた、その時でしょうてな感じのことがあります。

高齢者に多いがん。がんは生まれた時からある病気です。年齢とともにがんの発生率は高まってきます。しかし高齢者のがんは進行が遅い。ここがミソでありまして非常に高齢の場合には、侵襲の大きい手術をしない方が長生きということもあり得ますのでその辺の決断が難しいところです。40歳、50歳のがんはあっという間に進行してしまいますが、70,80になるともうがんと共存ですね。

高齢者で多いのは前立腺がんです。前立腺肥大は高齢者に非常に多いのですが自覚症状としては排尿困難。肥大であるか、がんかの区別はなかなかむつかしい。泌尿器官の先生が前立腺を触診したり、バイオプシー(生検)(前立腺の中に太い針を5ヶ所6ヶ所差し込んで検体を取ってがんか否かを確認する。また血液で PSA 検査がよく行われています。自治体の健診で隔年に無料でやっています。4以上の値は要注意です。

大腸癌、これも健診では便潜血反応をやります。その反応陽性になった人は大腸のファイバースコープをします。そこで見つかるのはポリープが多いです。ポリープを取ってきて顕微鏡で見て、がん化していないか確認する。ポリープも切除します。それからまた、何年かおきに見ていって同じことが発生していないかどうか確認する。便潜血反応が健診で採用されてから今までは大腸がんの死亡率がどんどん上がっていたんですがそれをきっかけに最近は下がってきています。そういうことでポリープの状況で見つけるということが大腸がんの発生を防ぐということになりますので、ポリープの内に切除することが大事です。

心臓病、これも多くて心筋梗塞と慢性心不全。心筋梗塞は狭心症が起こる人と起らない人があります。冠動脈が閉そくするとこれは全く待ったなしのことが多いので気をつけておく。普段から心電図をとってある程度の予防ができます。

慢性心不全、そんなには多くはありませんが足が腫れで来るということでわかります。心臓の収縮力が低下することで足が腫れる。心不全で足が腫れる人が多いです。少し足を上げて休めばそれで収まります。本格的な検査結果でわかります。

耳の病気としては加齢性難聴。これは老人性うつや認知症のきっかけになります。聞こえないということは周囲から隔離されることに繋がりますので、注意が必要です。耳鼻科で診てもらったら年だと言われて何もしてくれないと、患者さんの不満は多いです。有効な薬物療法はないということで補聴器を紹介されるけれども、きっちり使える人は少ない。変形性関節症は膝、股関節が多いです。関節の軟骨の老化による変形、これは太った女性に多い。常に体重がかかりますので膝や股関節の変形です。治療は生活改善、それから運動療法とか薬物療法があります。で、最終的には手術です。体重を増やさないことが大事ですね。

高齢者の入浴事故は非常に多い。救急搬送させる家庭内の不慮の事故としては。高齢者の7、8割は浴室で起こる溺死です。

病気としては脳卒中があります。脳梗塞が発症した場合には早急に救急車を呼びしかるべき病院に行くことが大事です。これは時間がないので省きます。以上です。ありがとうございました。

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