50歳代からのセカンドステージ


~趣味と暮らしの両立~

美術教室「京都水彩画塾」塾長 藤田和平

皆さんこんにちは。ただいまご紹介に預かりました藤田和平と申します。石澤君とは洛南高 校時代からの同級生でして、かれこれ付き合いは40年くらいになるでしょうか。 私はその後京都新聞社に入社しまして、この7月3「目で早期定年退職を選びました。 30数 年間新聞記者として報道の第一線でやって来ましたが趣味がございまして一つは絵画、もう一つはゴルフです。

ゴルフでご飯は食べて行けませんので第二の人生は60歳で定年してから、子供を中心とし た水彩画の普及と絵画の探求をセカンドステージの元にしようと思っていました。後進を育て終えたり、ちょうど私の-一つ年下の後輩が今年の株主総会で京都新聞社の社長になったり 役員になったりしましたのでちょっとうるさい先輩がいても大変でしょう!という事でいいタイミングだと思いまして4年の任期を残して辞めました。 7月31日に辞めまして翌日の8月1日に失業保険をもらうことなく絵画教室を開業いたしま した。

じゃあ新聞記者35年やって来ましたけれど、なぜ絵画なんだ?と皆さん不思議に思われてよく質問されます。新聞社のイメージというのは例えば事件記者であるとか経済記者、宗 教、大学、市政、行政担当などいろんなセクションがあります。そうそう報道カメラマンや スポーツ記者もいます。私がずっといましたのはグラフィック担当という所でした。何をす るかと言いますと、新聞というのは文字と写真、それ以外に実は地図とかカットとかデザイ ン物でできています。 4コマ漫画もございます。そういうものを作画担当するグラフィック記者として30数年やって参りました。

この仕事は珍しくて、日本の新聞社の中でも約2~300人ぐらいしかいないと言われていま す。その中でも特筆すべき普通の方ではできない仕事として法廷イラストがあります。被告 人の似顔絵を描く記者席があり、そこから主に殺人事件の被告の似顔絵を描く訳です。常に 後ろ姿しか見えませんし裁判官の顔しか見えません。ですから刑務官と一緒に入廷して来 る、ものの3~4秒の間にどういうそぶりをしているか、どういう表情をしているか?と言 うものを一瞬に描く。で法廷の最中に描いて、描けたら途中退席して本社に似顔絵を伝送して朝刊、夕刊に間に合わせる。そう言う仕事をして来ましたので退職後水彩画教室を開くというのはあながち門外漢では無いとも言えます。

そういう意味では今までの長い職業人生の中で新聞記者という仕事と好きな美術、それか ら下手くそなゴルフなんかをうまくやってこられて非常に幸せだと思っています。 これからは人生80年90年時代と言われていますので 次のステージは、この世界で飯を食 って行きたい、もしくは子供の絵画の普及に努めたいと言う大きな理念を持って今ここにおります。 で今回、石津君からロータリーさんで卓話をとお話を頂きまして、僕なんかめっそうもないとお話ししたんですけれども、こういう機会を頂きまして本当にありがたいと思っています。

会場に3~4点原画を持って来させて頂きました。つい先日まで滋賀銀行の醍醐支店さん で個展をやらせて頂いておりまして、その時のオーダーで滋賀と京都の風景を描いて欲しいと言う事で描いた水彩画です。

次に本日の卓話のテーマの一つであります「水彩画の魅力と歴史」についてお話しさせて頂きます。

絵画には大きく分けて油絵と日本画と水彩画があります。また技法別に別れていまして、例 えばテンペラ画であるとか版画であるとか浮世絵であるとか、水墨画であるとかいろんなジャンルがあります。

油絵と言うのはクルミとか宝石とか岩を砕いたものを植物油に混ぜて、マーガリンとかマヨ ネーズのような粘度を持たせてキャンバスに塗って描いて行きます。これは非常に持ちがいいんです。写真の無かった1500~1600年代ぐらいに主に宮廷画家により開発されたとも言われています。なかなか乾きませんので大きなキャンバスに描くとか、聖堂の天井壁画に描くとかいうもので非常に高尚な絵画と呼ばれています。今でも美術オークション市場でも何億、何十億とかという値段で取引されるようなジャンルです。

次に日本画ですが、日本画と言う言葉ができたのはまだ昭和に入って戦前ぐらいです。それ までは大和絵と言われていました。大和絵の中にも浮世絵であったり水墨画であったりといろいろありまして、 2~3年前に流行りました「琳派」ですね、泡坂芳一とか俵屋宗達とか 伊藤若沖とか、これもみな大和絵と呼ばれてました。 今は大きく総称して日本画と呼ばれております。西暦「500年前後に洋画が空前の大ブーム を起こす訳です。そこに100年ぐらい遅れて日本画が発達して来ました。日本は当時鎖国をしていましたので当然タイムラグがあります。

私が描いている水彩画ですが、これは「800年の歴史があります。アルタミラのラスコー洞 窟の壁画がそうですね。水を溶剤として描く絵画と言う意味ではこの洞窟の壁画にさかのぼります。その当時は油絵もありませんし、日本の顔彩なんかも無かった。歴史として一番古いのが実は水彩画なのです。

ただオークションとか収集家の中ではやはり油絵とか日本画よりもちょっとランクが下に見られます。技法は一緒なんですけれど。 それはなぜかと言いますとやはり持ちの悪さですね。紙に水で濡れた絵具で塗りますのでどうしても退色性とか腐食性があるという事で軽く見られる傾向にあります。それはちょっと水彩画家として活動している僕としては悔しいなあと言う思いがあります。ただこれはいい紙ができたりいい絵具が出来てくると自然に問題が解消されると思っています。

メリットデメリットで言えば油絵を始めようと思えばかなりの出費が必要ですし、後片付 けがものすごく大変です。日本画は下地作りをしなければなりませんからそれもまた。 その点水彩画はものすごく安価で道具を揃えられますし、絵手紙で有名なこのハガキサイズ一番大きなものでも私のこの作品の様に2時間程度で描く事が出来ます。

ただやはり油絵と比べてどうしても、ああ水彩画家かと言うような言われ方をしてしまう。 水彩画もすごいんだよ、子供さんもお年寄りも老若男女問わずに取り組める美術なんだよという啓蒙もこれからして行きたいなというのも今回の画塾の開講の目的の一つでもあります。

じゃこれからもし習いに行くとしますとなかなか油絵は敷居が高い。日本画はもっと赤い。水彩画は人気があって敷居が低いんでしょうか。開講しまだよちよち歩きの状態ですけども 手応えは感じておりますし、時代も今、各書店の美術コーナーへ行っても水彩画の教本がものすごく多いです。

先日みやこメッセで開かれました画材祭りといういろんな画材の展覧会では水彩画の道具が すごく多かったです。人生80年90年時代と言われている中で日本の人口は1億2000万、 3000万人です。しかも3人に1人が65歳以上という高齢社会になって来ています。調べてみますと、この65歳以上の方の習い事率が実に50%を超えているそうです。いわゆる会社を定年し第一線から退かれた先輩たちの半分が習い事をされている訳です。その中でじゃあ何をなさっておられるのかと言うと、男性は資格習得系が多いので例えば京都検定を勉強しようとか社会保険労務士を取ろうとかいろいろありますけれどそれはまず省くとしまして、あとスポーツクラブも省くとしまして1位が男女共に英会話教室。 2位は女性が生け花男性が書道、 3位は女性の絵画、男性は写真、そして男性の4位に水彩画というリクルートの結果が出ています この他に50~100の習い事がありますが、65歳以上の方が水彩画を始める方が多いと言う のも手応えで感じ取れます。

もう一つ。私の教室ではジュニアクラスを用意していますが、逆にこのクラスが少ないんで す。なぜかと言いますと最近は紙に手で書くと言うよりもタブレットとかパソコンで直接電 子ペンで書く、その方が家が汚れないと言う親御さんがたくさんおられますのでちょっと悲しいなと思っています。 私の教室に来てもらえば大きな紙と世界中の画材に触って頂いて、手で描く感覚や紙の匂い、絵具の匂い、そういうものを感じて欲しいなと思っています。

僕も教室の休みの日にはゴルフも行きますしいろんな事をしますけど、やはり一番多いのはイーゼルを持ってスケッチに行く事なんです。スケッチと言いましても小さなコンパクトパレットをポケットに入れてA3やA4ぐらいのスケッチブック、あとは鉛筆1本。これだけで自転車とか事、バス、電車で京都滋賀へと、行って無い所が無いくらいにスケッチをしています。

当然ここ宇治界隈も有名どころは全部描いております。世界遺産の平等院や宇治上神社は中では描けません。醍醐にも醍醐寺がありますがイーゼルを立てて描く事は禁止されています。鉛筆はOKだけれども絵具はだめと定められています。でも汚れない絵具もありますし、水が-滴も落ちないようにしても描けますので、寺院の中でもちょっとスケッチさせて 頂けたらなって、こういう活動もこれからやって行きたいと思っています。

話は変わりますが、水彩画には大きな効能があるそうです。まず頭や体が休まる。瞑想状態 で良いアイデアが生まれる。心と体に新鮮な活力が生まれる。精神が安定する。それだった らテニスもゴルフも音楽でも一緒ではないかと思いましたがちょっとニュアンスが違う事がわかりました。

例えば音楽は脳の活性とか安眠、精神安定など良く似てはいますが体の治癒が目的で使われることが多いそうです。 一方水彩画はアイデアが次々と湧いてくると言われています。確かに外で描いていますと対象物の森や家を見ながら、この山の向こうには何があるのかな、その向こうに川があってそこにはどんな生物がいるのかなと手を動かしながらいろいろとアイデアが湧いてきて次にそちらへ行きたいなとしばしば思います。 ゴルフだと爽快感はありますが、とりあえず入れ入ればかりでアイデアは確かに湧いてこないなあというのがぼくの感想です。そういう意味でも水彩画は自然の中でスケッチしたりお年寄りや小さな子供でも関係なく進めて学んで行けるものです。非常に頭を活性化する、アイデアも出る、精神的な安定も得られる。ですからこれらの啓蒙と普及活動ももっと 行って行きたいと思っています。

日本でじゃあ誰が水彩画の第一人者かというと、別にこれは葛飾北斎や伊藤若沖でもないんですね。これはやはり昭和に入ってからですが、いわさきちひろさんが日本の第一人者じゃないかと言われています。協会や団体がありませんので裏が取れていませんが僕もそう思います。

日本には有名な作家さんがおられますが、水彩画は油絵とは大和絵、日本画とは違う進化を するのではないかと思っています。 いわさきちひろさん後はじゃ誰が?となると次は手塚治虫さんなんですね。漫画とものすごく密接な関係がある。油絵を描くための下絵として水彩画が用いられてきたという西洋の歴史とまた違って、アニメの発達した日本においては、アニメの下絵として水彩画が使われてきました。そういう点ではいわさきちひろさんの次は手塚治虫さんでありジブリの宮崎駿さんじゃないか。でそうこうしているうちに50年60年、いわさきちひろさんも没後何年か経ちますけれども、いずれにしても歴史としてはここ70~80年以内の話ですね。昨今水彩画のブームが到来したと言われております。

先ほどの耐久年数の話ですが、油絵で600年、水彩画で200年と言われております。それはまあテクノロジーの発展でどんどん改善されて行くと思います。

もう一点、緻密な描写ができないとか言われていますが、いやいやそうじゃないんですよと 言って描いたのがこの3点です。絵を自慢する訳ではありませんがここまで詳細に描けま す。またかかっている経費というのは多分紙代も入れて1000円もかかっていません。それ から大きな作品ですが全て2時間以内で完成します。これは油絵ではできないこと。京都のしかも伏見の醍醐地区の水彩画の第一人者としては、安くて短時間で緻密な絵が描けるんだという、こういう活動も画塾の生徒さんとともにやって行きたいと思っています。

今、左京区岡崎の京都市美術館が改装工事をしています。今の予定では2020年の3月21日にリニューアルオープンとなっています。ネーミングライツで今度、京都市京セラ美術館という名前になります。当然いろんな過去の工芸、絵画以外の美術品を収集するのが美術館の 仕事なんですが、京都市美術館の美術品収集方針というのが新しく策定されまして、その中で非常に面白い点が三つあります。 一つは絵画美術品、二つ目は江戸後期の何々とかありますがもう一つは現代美術において新たな展開を見せる作家作品に注目して収集するという一文が加えられました。

来年の3月リニューアルオープンですが私の作品なり、私の塾生の作品などが将来京都市京セラ美術館に収蔵されればいいなと期待しております。ちなみに3月21日にリニューアルオープンした後の7月はドラえもん展が開催されます。デパート、百貨店で行われるのではなくて京都市美術館で行われる。これはとても大きな意義があると思います。先ほど申しましたように 漫画やアニメとやはり密接に関連している証と言えます。ドラえもんの原画が美術館で見られるというのも本当に面白い時代になりました。そういう 時代にあって僕も水彩画の普及、創作活動に邁進して行きたいと思います。画塾の経営もなかなか大変な時代でして、日本中に同業者なり同僚、友人がいますが彼らもまたしかりです。 1年2年と腰を据えながら経営を軌道に乗せて行って、その理念にも結びつけていきたいと思っております。

本日はお招きいただきましてありがとうございました。南郷会長、石津君お世話になりまし た。今後も宇治鳳凰ロータリークラブ様の益々の発展と会員の皆様のご健康ご多幸をお祈りして今日の卓話を終わらせていただきます。 本日はどうもありがとうございました。

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