2019.1.24(ホームクラブでの卓話)
地区職業奉仕委員長
中島 健 (宇治鳳凰RC)
改めましてこんにちは。今月は職業奉仕月間ということで職業奉仕に関するお話です。
職業奉仕と云いましてもいろんな切り口があると思います。核心的なところは、商売の極意であるとか、企業経営の心であるとか、そういったところを出来ればいいが、そういう話は事業の上で大成功を収めておられる会員の方にお話し頂くことが一番です。わたしの話は、ロータリーが云う職業奉仕とはどんなものであるかということです。
ちょうど大石会長の年度から今回で3年連続ということで、前と同じお話をするわけにもいかない。昨年7月28日に地区の会員拡大増強、公共イメージの両委員会が主催するフォーラムがありました。増強につながる話、それも実践的なものを、わかりやすい内容の話をせよとの依頼がありました。今日はその内容をお話しします。
まず、この話を始める大前提として
ロータリーとはいったいどういう団体であるのか。
RIはロータリーをどのように考えているのか。
を説明しておく必要があります。2015年10月のRI理事会で決定した内容ですが、最近までのロータリーは人道的な奉仕に傾きすぎていた。特徴である事業や専門職種、地域社会のリーダーの集まりであることを重要視してなかった。2015年理事会では、そうではなくて、この事業、専門職、地域社会のリーダーの集まりであるとともに、且つ、人道的な活動を行う団体である。ロータリーという団体を定義しなおしたんですね。とても重要なところです。
「職業奉仕の手引き」(職業奉仕入門)が今年度、久しぶりに改訂されました。表題からして、”実践しよう”、理念の話ではなくてとにかく”行動しよう”といっています。今日は、増強とつながる部分だけをピックアップしましたが、「スキルと職業」という項目があり、そこでは奉仕プロジェクトで職業スキルを活用する。自分の職業上の手腕を用いてボランティア活動をしなさいといっています。実際、それが増強につながるのかどうかということですが、日本ではこういう例は少ないでしょうが、外国とくに途上国では、私は医者の資格をもっているとか、人道的援助の上ですごく役に立つ技術をもっている人が、その技術を社会の役に立てたいと考えている人が結構多いんですね。だからロータリーに入って、奉仕プロジェクトでそういう手腕を発揮する。日本のロータリーでも中にはいらっしゃるんですね。この月曜日に京都西RCで卓話をさせていただきました。そのなかには私も実は自分の仕事を奉仕に生かしたいと思って入りましたという人がいらっしゃいました。ところが実際ロータリークラブに入ってみると、割と伝統的な日本古来の職業奉仕論が主流で、職業ボランティアなど論外ということになるんですね。RIが、職業奉仕として職業ボランティアをせよと云っている、ということをあまり知らない、先輩方があまりそういうことをおっしゃらない、RIがこんなことをいっていると聞いて逆にビックリされている。そんな例もありました。それから職業研修と職業スキルの向上ということで、ビジネスネットワークの拡張。自分の仕事のつながりで奉仕プロジェクトとかいろんなことをやってそのつながりで入会してもらう、そういう展開ですね。それからキャリア相談会。これは技能をもっている会員がロータリーに入って、あの人がいらっしゃるから私は入りました。メンター制度的に仕事の場以外のところでいろんな助言なりを求める。これも一つの可能性としてあるわけです。是非手引きを読んでください。
1-実際それが増強につながるのか。
日本ではその例はないとはいえないが少ない。自分の仕事をいかしたい。で、奉仕プロジェクトを立ち上げて、そのつながりで入会してもらう。専門的な立場からの助言をする。自分を知ってもらって話し合うことが大切なんです。
世界の実例から
キャピトルヒル・RC: 地元のNPOと共同で地域の課題に取り組む。会員は戦略コンサルタントとしてこれらの団体に協力して専門的な立場から助言を行う。大体NPOは、いわゆる社協に入っているボランティア団体のような活動をしているわけです。そこに技術者とか、手話ができる人とか、技能を持つロータリーの会員がその団体に対して助言を行う。そういう仕組みをクラブの中で作っているわけです。そういう活動をしている内にそこからロータリーに入ってくる人が見つかる。で、実績をあげているというのがキャピトルヒル・RCです。クラブには職業上いろんな手腕をもっている人がいます。そういうひとが自分の職業上のスキルを実際その奉仕活動に生かすことが出来るわけです。そういう場、機会が増えるわけです。それによって自分の職業がすごく社会のために活きているということを実感されてロータリーの会員維持にもつながっている。その結果、クラブ員による奉仕への参加が増え、会員維持、新会員が増えた。地域社会からその可視性が高まった、クラブがそういうことをやっている団体であることが認知されてきた。
日本にも活動例がある。
東京愛宕RC:―育て、企業家「東京愛宕創業支援塾」―といい、若い人で、これから事業を起こす人を対象に講習会をやったわけです。起業を目指す学生、会社に勤めながら起業を目指しているサラリーマン、事業転換による新規事業を行うことを考えている人々を対象に、起業・創業を促し、地域社会の活性化に取り組むことを目的とした全4回の授業、講習会をやります。前半に起業家や投資家による基調講演や対談を行い、そして後半に参加者とクラブ会員によるグループディスカッションを行う。全4回を起承転結と捉えて4回すべてに参加することにより、起業・創業を具体的にイメージし、起業・創業できる状態まで高められるような内容としている。最終回では参加者が自らの事業計画のプレゼンを発表し、ゲストの投資家や中小企業庁の方々、及びクラブの会員が採点、講評を行うというものです。
結果として、ロータリーへの認知度が高まった。ロータリークラブがあるんだ。それはこういう活動をしているんだ。参加者が実際に起業し成功してロータリーに入会し、その経験を還元してくれることが最終的な目標である。やったからといってすぐに会員増強につながらないけれど種を蒔いて育てて、そしてロータリーに入ってもらおうというとある意味、気の長い話なんですがそういうことをやられたんです。(「Rの友」2016.1月号)
まとめ1
RIや世界のロータリーが考える増強につながる職業奉仕
海外では職業奉仕、特に若い会員へのメンターシップ制度や個人的な指導が会員維持や会員増強に役に立つと考えられている。
会員が自身の技能(手腕)才能、リソースをロータリーに持たらすこと(奉仕プロジェクトを通じた社会貢献)で、会員増強と会員維持に貢献できると考えられている。
これらはあまり日本ではなじみのない議論であるが日本以外のロータリーではクラブが行う職業奉仕の例として認識されている(RLI PARTⅢ)
2-日本型職業奉仕論を前面に出した会員増強
職業奉仕的なアプローチをすることによって増強につなげている、そして日本型職業奉仕論(=商人道、職業倫理)を前面に出し会員増強につなげている東京御苑RCの場合
つい最近にできたクラブで、名誉会員にボニージャックスが入会しています。2015年3月に会員40名で創立する、2017年7月には、ほぼ2年半ぐらいで会員120名(内女性会員が37名)、年内目標として会員数200名を目指している。会員の種類としては、事業主またはこれに準ずる会員、それから一般会員(41歳以上、それと31歳から40歳)、専業主婦やシニア。例会食事代後払い会員があります。事業主の会費が年間18万円、それから一般社会人、40歳以降は14万円、31歳から40歳までが12万円、専業主婦、シニアは12万円の会費。食事会後払い会員は年間8万円。それ以外に入会金が3万円、R財団・米山寄付として強制的に2万円。ただ、例会参加費が必要です。18万円の会費を払う人は例会参加費が2500円。この中に食事代が入っています。食事代後払い会員は1回例会に参加するのに5500円必要です。
このクラブの特徴は、初期ロータリーの特徴である会員同士の相互扶助やシェルドンの職業奉仕理念を前面に出しています。会員のビジネス上の発展を入会することのメリットとしてPRしています。
このクラブの、いわゆるうちのクラブでいう、クラブ活動概況報告書を開けますと最初にロータリーを立ち上げた方の写真があって、ロータリアン創成期の、そういう理念に戻ろうとかいうことを謳っています。また、ホームページのトップページには「東京御苑ロータリーに入会するとこんなすてきなことがあなたを待っています」としていくつか項目が上がっています:
1・友情
2・ロータリーを定時にビジネス上の発展
3・個人的成長と発展
・・・・・
・家族のためのプログラム
・世界の市民たること
・旅行中の援助
・名声というのがあります。
・人前で話を話す術の養成
20個ある項目の中で一番最後に「奉仕する機会」が上がっています。奉仕というのが一番最後になっているわけです。
この中でロータリーの定義に、会員のビジネスの発展がロータリーが創立されたのがもうひとつの理由です。誰でもネットワークが必要です。ロータリアンはすべてのビジネス社会を網羅する横断的な組織です。会員はあらゆる職業の人々が参加しています。ロータリアンはお互い助け合い、団体として他者を助けます。仕事の発展とか、そういうところに繋がるだろうということを前面に打ち出して会員増強をやっているわけです。親睦はほとんど出てこないですね。興味のある方はホームページを見てください。
大宮西ロータリークラブの場合
ロータリー活動の両輪である親睦(仲間づくり)と奉仕(感動)の上に、事業上の利益(ビジネスチャンス)を加えて会員増強をやっておられます。若手の勧誘の際、ロータリーの理念の説明とともに「ロータリーは異業種の集まりで経営の勉強になる」こともPRをしています。会員数が一時50人ぐらいから42人ぐらいまでに下がりましたが、そういう形で増強に努めた結果として113人に増えたということです。もともとは大きなクラブでもっと沢山の会員がいたのいですが、減り続けて底が42人。そのあと熱い思いを持った増強委員長が現れ、こういうことを前面に出して113人までにもっていった。もちろんロータリーに入ったからといってすぐ仕事が増えるよとは言ってないんです。親睦と奉仕を重ねることにより、信頼関係が生まれてくる中でビジネスチャンスも広がるというメリットをアピール。確かにこれは言えていると思います。入ったからといってすぐ誰、誰、これちょっと頼むわとかいうふうにはならないと思います。一緒にいろんな親睦の事業に出たり、或いは奉仕活動で汗を流したりしている内にお互いがわかってきて、ちょっと頼んでみようかなというふうになる、ということをアピールしています。
例えば例会とかであまり仕事の話ばかりをするのは、現在では何となくタブー視されているような気がしますが、この殻を破ったわけです。相互扶助、これはもともとポールハリスがロータリーを作ったときの目的のひとつ。相互扶助というロータリーの草創期の原点に戻り会員の事業上の利益増大、ビジネスチャンスの利点を打ち出したのですね。
尤も入会する方も初めからそうしたことを大いに期待しているという訳でなく、今の若者の考え方として、入会だけで仕事が増えるとは誰も考えていない。経営の勉強であったり、異業種交流会のように考えている。メンバーとの地域的関わり合いや生きた情報を求めている。入会後は仲間を作り上手にビジネスに活かしている。こういうことを親睦とか奉仕とか、そういうことではなくて本当にロータリーの草創期の目的である相互扶助、それを前面に出して増強をやった結果こうなったという話です。
まとめ2
ロータリーがこの事業上の利益をどのようにとらえて発展させたか、ということですが、まずロータリーの誕生、これが1905年.ポールハリスを含む4人の仲間、ポールハリスは弁護士、石炭商、鉱山技師、もう1人は洗濯屋さん。いずれもそんなに大きくビジネスをやっていた人たちではなくて、本当に小さな零細であったり、中小であったり、そういう人たち、そういう経営者が集まってきて、お互いに助け合って行こうよというのがロータリーの始まりだったんですね。そういう物質的な相互扶助。それでしばらくは行くのですが、そんなものだけでは組織としては発展していかないからもっと社会に的に意味のある奉仕をやろうということで、そのきっかけになったのがアーサーシェルドンの“He Profits Most Who Serves Best”に代表される経営学ですね。ロータリーに入ればその最新の経営学みたいなものが学べるというのがありまして、それがまた会員増強の原動力になったんですね。それは拡大の原動力となるとともに、気の合う者同士が単に儲けのために集まっているのではなくて、ロータリーという奉仕、サービスを重視する、もっと社会的に良いことをする団体であると認知されていくんですね。
その後、資本主義が進んでいくと今度は賃上げであるとか労働者の保護であるとか、労働争議という形でいろいろと問題が起こってくる。それを例会の中で、お前とこどうしているんだ?というふうに情報交換、アイディアを交換して……という一時期がありました。これは精神的な相互扶助、事業の発想とかアイディアを交換する、例会に行ってメリットのある時間を過ごしたわけです。その時代、それがまたロータリーの会員増強に繋がっていったということです。
その後、時間の経過とともに社会奉仕や人道的奉仕活動に重点が移ってしまうとともに、従来の例会機能が低下してしまって、いわゆる金持ちの、裕福な人たちが集まって昼ご飯を食べる会になってしまった。そういうのが今の停滞というか、それを招いているんじゃないかということです。で、そのアンチテーゼということで、例会機能の重視であったりビジネスというものをもっと前面に打ち出して、拡大していったというのが大宮とか東京愛宕のお話ということになります。
1916年、道徳律が出来た直後、決議23-34よりも前になりますが、当時ロータリーは次のようなことをPRしています。
ロータリーに入るといいことがある。
1・人生で、是非とも持たねばならない知己が得られる。
2・純粋で健全な親睦というものがどんなによいものかを知ることができる。
3・どうすれば仕事が成功し、問題解決ができるかについて啓発を受けることができる。
4・効率の高い経営方法とは何かについて知らず知らずのうちに教育が受けられる。
5・多くの自分の知らない情報が得られ、先見の明を授けられる。
6・自分の思考の限界を自覚し、持って転機を得ることができる。
7・知己を広め、自分を他に理解してもらう機会が得られ、そのことが自分の企業に対する信頼を呼ぶことに繋がり、その結果として企業上の利益となる。
8・各自が社会の指導者となるだけの訓練を受けられる。
9・自分を人間的に磨くことができる。(ガイ・ガンディカ-著「ロータリー通解」1916)
勿論、社会奉仕、人道奉仕もやっているんですが、それよりむしろ事業上の利益を非常に重視していたことがわかると思います。
決議23-34は、ロータリーは人生哲学で、利己的な欲求は(会員の自己の)事業の発展、対社会的な奉仕は他人への奉仕、この相反する2つの心の葛藤を調和させるのが決議23-34です。しかし、事業発展に関する配慮がクラブの運営等で喪失してしまってそれがロータリーの魅力の減退に繋がったのではないか?
クラブのあり方
○個々のロータリアンの事業が発展すれば間違いなく会員は増えていく
○事業人の「利己の心」とは自らの事業を反映させること
○職業奉仕はシェルドンの経営学の理念を実践し、事業を継続的に発展させること
○クラブの例会は会員同士が自らの事業について語り、相談する場合、発想、アイディア、ノウハウを交換する場
こういうことでロータリーの会員であることのメリットを創出することが必要である
○かっては職業奉仕を前提として奉仕の心を磨く場をロータリーでは例会と呼んでいた
○企業経営上の問題点を胸襟を開いて相談できる環境がクラブ内にあるでしょうか?
○自分が直面する問題を親身になって相談できる友人がクラブ内にいるでしょうか?
○職業上得られた発想やアイディアを交換し、自分の家庭・職場・地域社会に戻って、それを実践に移していますか?
○会員は事業上の大切な時間を割いて例会に出席している。従って例会出席によって得られるメリットは事業上の貴重な時間を割くデメリットよりも大きくなければならない。
はたしてそれができているのか?
これらは職業奉仕にとどまらず、クラブの管理運営とか例会の在り方とか、そういうところにつながってくる問題なんですね。この後、みんなでディスカッションする時間があれば一番いいわけですが、今日はちょっとそこまでないので問題提議ということでとどめたいと思います。
最後に
ポールハリスの言葉
一番いい時代はこれからだ!!
(1922年にロータリーが全世界に拡大していく中で、ある新聞社のインタビューにポールハリスが答えたものです)
ということでどうもご清聴ありがとうございました。
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